21世紀に木製フレームのクルマでルマン24時間出場って正気か? 令和になっても木製フレームの新車を売る「モーガン」の常人には理解不能な魅力 (2/2ページ)

レースでも活躍し人気モデルとなった

 さて、2002年になるとモーガンは公約通りル・マン24時間レースに参戦しました。エンジンはアルピナB10にも使われた4.6リッターV8へと換装され、330~350馬力へとチューンアップ。ルーフやボンネットフードといったボディパーツのほとんどがカーボンパーツに変更されたほか、およそモーガンには似合いそうもない大型のGTウイングまで取り付けられています。

 しかしながら、3台がデウォルト・レーススポーツからエントリーしたものの、全車エンジントラブルでリタイヤという残念な結果に。ですが、2004年のル・マン(チーム郷がアウディで初優勝した年)にはモーガンのワークスチームから1台がエントリーし、313ラップを走り切るという大健闘を見せたのでした。

 こうした活躍からもモーガン・エアロ8は大人気を博し、2018年の生産終了まで5世代のモデルをリリースしています。世代ごとに細かなモデルチェンジが施されたことは、モーガンのような少量生産メーカーとしては珍しいこと。ですが、じつは世代ごとにモーガンは限定車やワンオフモデルを製作しており、そこで採用した新デザインやニューメカを新世代モデルへと受け継いだというわけです。

 たとえば、2008~2009年の間に100台限定でリリースされたモーガン・エアロマックスは、キャビンからリヤエンドまでをボートテールにカスタマイズしたスペシャルなエアロ8。そして、2009年のコンクールデレガンスにはボートテールをタルガトップ風にカスタムしたエアロ・スーパースポーツを出品。こちらは2016年までカタログモデルとして発売されています。

 そのほか、オープンボディが追加されたり、ATを搭載したモデルが(少量ながら)生産されるなど、エアロ8はじつに拡張性が高いモデルだったともいえそうです。

2019年にモーガンのカタログからエアロ8がその名を消すと、かわってリベット&ボンディングで構成されたアルミシャシーとなったモーガン・プラスシックスが主役となりました。「CXジェネレーション」と呼ばれる新型シャシーですが、モーガンはまたもや木を使っています(笑)。主要部分はアルミに任せ、フロントスカットルからボディサイド、そしてリヤエンドに至るまで、セイヨウトネリコが額縁かのように組み込まれているのです。

 もはや伝統工芸の領域にあるモーガンのクルマ作りですが、エアロ8の成功でもわかるとおり、しっかりスポーツカーとして完成しているのは見事としかいえませんね。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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