この記事をまとめると
■モーガンは「木」を使ったスポーツカーとして有名なイギリスの少量生産メーカー
■木製フレームとアルミを合わせたシャシーの「エアロ8」が2000年に新型車として登場
■なんとル・マン24時間レースにも出場した人気車となり改良が加えられ続けている
モーガン伝統の木製フレームを使用した設計
だいぶ前に、モーガン・プラス8のオーナーから「空気が乾燥してくるとコーナリングスピードが下がる」と聞いて驚いたことがありました。ご存じのとおり、イギリスの老舗スポーツカーメーカーのモーガンが作るモデルは、フレームやシャシーに木を使っていることで有名かと。木製フレームゆえに空気中の湿度には敏感で、コーナリングに影響する変形があるのかと目を丸くしたものです。
が、これはオーナーが筆者をからかっただけのこと。モーガンの作るフレームは「それほどヤワじゃないよ」と笑われたのですが、実際に彼らは木のフレームをもったマシンでル・マンにまで出場していたのです。
2000年のジュネーブショーでデビューしたモーガン・エアロ8は、同社にとってなんと64年ぶりの新型車でした。シャシーは部分的に木製フレームを使うという伝統的な設計だったために、オールドファンは喝采をもって迎えたものの、「いくらなんでも21世紀に木のフレームかよ」という懐疑的な声も少なくなかったとか。
また、286馬力/430Nmを発生する、BMW製4.4リッターV8DOHCエンジン(M62型)に加えゲトラグの6速MTを搭載したことも大きなトピックで、「モーガン・エアロ8はGTレースに参戦します」という公式発表を信憑性あるものにしていたのです。
加えて、エアロの名に恥じぬ空気の流れを汲んだような曲線や、ニュービートルから借用してきたヘッドライトなど、空力を重視したボディにも彼らの本気をひしひしと感じさせてくれたのでした。
ショーの会期中には2000年度の生産分がすべて売り切れたというほどの注目を浴びたエアロ8ですが、さすがに開発は時間がかかったようで、試作車がはじめてBMWのテストコースを走れたのは1997年のことだったとか。
ちなみに、BMWはモーガンが自社製エンジンを選んだことがよほどうれしかったのか、自社で使わなくなってもエアロ8のためだけにV8エンジンを生産していたのだそうです。
ところで、いくら伝統の木製フレームといえども、BMWの300馬力近いエンジンに耐えられるものかと思われるのもごもっとも。ですが、さすが64年ぶりの新型だけあって、木でできた部分は限定的であり、メインシャシーにはアルミを使っているのです。
ただし、使われている木材はそれまで同様セイヨウトネリコという硬い樹木で、後述しますがル・マンやFIA GT選手権で走ったレースカーもまったく同じ構成とのこと。どんだけ木にこだわるのか、モーガンってやっぱり不思議なメーカーです。