デザインから板金まで全部お任せ! WEB CARTOPチームのメディア対抗4時間耐久レース用ロードスターを仕上げた「K/CONCEPT DESIGN」のワザをご紹介 (2/2ページ)

マルチな才能を持つ職人が手掛ける珠玉のラッピング技術

 さて、デザインが決まったとことで、今度は肝心の施工だ。

 このデザイン、見てわかるとおりフルラップング。もとが白いボディなのだが、白い部分はほとんどない。つまり、全部をステッカーで埋めるわけだ。なので、業者選定前から、かなりの費用を覚悟していた。

 なぜ覚悟したか。筆者は別の機会で、この手のラッピングの費用をオーナーに聞いたことあるからだ。そしたら、コンパクトカーサイズで100万円近く払ったという声がちらほら。「シール貼るだけだろ!? ボッタクリか!?」とかなんとか失礼なことを思ったこともあったが、相場的にそんなもんらしい。これはマズい。予算オーバー必至。確実に給料天引き案件だ。

 しかし、形は違えど物を生み出す同士。腕に物を言わせる職人技が光る世界だけに、この相場はよくよく考えたら適正価格であることに間違いない。使う素材によるが、クルマを包むステッカーの印刷代だけで、そもそも数十万とも言われている世界でもある。

 そんな悩める筆者のもとに救いの手を伸ばしてくれた、文字どおり救世主が今回紹介する、静岡県御殿場市に店を構えるラッピング専門店、「K/CONCEPT DESIGN」だ。

 このお店、代表の藤井 考さんとスタッフの齋藤龍之介さんの2名で営むデザイン兼ラッピング屋として営んでいる。

 ではなぜここに依頼をしたか?

 それは、数多くの施工実績があることはもちろん、代表の藤井さんの愛車が、今回のレースで使用するのと同じNDロードスターであり、何百回とラッピングをご自身でやっているという、ロードスターのことなら知らないことはないほどの職人だからだ。愛車も魔改造された、その筋では有名な衝撃的なNDロードスター(諸々公認済み)と、FD3Sである。

 それと、スタッフの齋藤龍之介さんと筆者がもともと知り合いだったので、藁にもすがる思いで相談したという情けない背景もあるというのはここだけの話。

 さて、そんな藤井さんだが、経歴がとにかく凄く、とてもラッピング屋の代表とは思えないほど、マルチな才能に溢れている。

 と、言うのも藤井さん。大学卒業後は誰もが知る大手ゲームメーカーに就職し、CGデザインを担当。その後、初の愛車にするほど大好きなロードスターをはじめ、これまた誰もが知るブランドのエアロなどを手掛けるアフターパーツメーカーに就職し、CADやデザイン、クレイモデルなどを触る。このとき手掛けたクレイモデルは、東京オートサロンの某メーカーブースでも展示された。その次は某大手中古車メーカーの板金部門に就職。そこで板金技術を磨いたそう。

 そんな本職と同時に趣味で行っていたのが、痛車のデザインやイラスト作成だったそうだ。イラストに関しては同人誌を出すレベルほど。筆者的には、イラストで食っていけるほどのスキルをもつといっても過言ではないほどのクオリティ。しかし、この時点ではあくまで痛車のデザインは趣味。上記の仕事とは関係なかった。しかし、評判が評判を呼び、オタクがオタクを連れてきて、いつしか依頼殺到……そんな環境になったという。

 そこで藤井さんは一念発起。今まで施工に使っていた施設は運営方針の変更で使えなくなり、板金業との両立も難しい段階になったとのことで、デザインから施工まで一括できる「K/CONCEPT DESIGN」を、脱サラして立ち上げた。2021年3月の話だ。

 とはいえ、痛車のデザインをはじめ、施工まできる店はほかにもある。「K/CONCEPT DESIGN」のデザインの強みはどこにあるのだろうか?

 藤井さんは、「うちは、好きなキャラクターと方向性だけ決めてくれたら数パターンを出して依頼者に決めてもらう感じで進めます。もちろん、やってほしいデザインがあれば、ヒアリングして反映させることもOKです。アニメやゲームのキャラクターは著作権の絡みもあるのでデリケートですが、僕が手書きで起こせるので、著作権の問題はとりあえず大丈夫ということになっているのも強みです。もちろん、自主制作もNGみたいなコンテンツやロゴも多いので、全部ではないですが……。頭の中ですぐイメージできるタイプなので、混雑度合いによりますが、ゼロイチで始めても1台1カ月くらいでいけますね」と語る。

 さらに「K/CONCEPT DESIGN」はまだまだ強みがある。なんとここ、自社である程度の板金もできてしまうのだ!

「なにが凄いの?」となった人はちょっと考えてみてほしい。ラッピングをお願いするのはラッピング屋だ。板金屋じゃない。つまり、クルマにダメージがあったら、その店経由で板金を委託か出し直しだ。しかし、ここではそれが不要。なぜなら藤井さん自らの手で直せるからだ。

 痛車ユーザーはクルマにこだわる人も少なくないので、愛車にこだわりのパーツやレアパーツがついてるケースも多い。さらにいうと、痛車はリピーターも多い。剥がしたときに経年劣化による塗装の剥げや、通常使用時によるエアロの割れ、ボディの凹みや傷が目立つのも珍しくないのだ。

 ただ、板金経験のある藤井さんにかかれば、大概のものはリペアして施工まで可能。「今回は板金だけしてくれ!」なんてお客さんも訪れるそう。それほど腕が立つのだ。過去に、スタッフの齋藤さんの愛車に施工する際に、「これはこのままじゃマズいだろ」と、気になったところを自らのこだわりで直しているほどの職人気質でもある。

 また、痛車のほか、ダートトライアル車両やラリーかーといった競技車両、官公庁の車両や芝刈り機などの農機具も手掛けるほど多彩。ステアリングや痛スノーボード(!?)、PCなどにも施工しているとのことで、とにかく何にでも貼れる。

 使用してるのは、アメリカのアーロン社製のモノで、これは施工が大変なかわりにちょっとした調整もしやすいので、クオリティを求めるには向いているそう。シートのクセもわかっているのでやりやすいんだとか。そんなこともあって、「印刷までやってからシートだけ貼ってほしい」は受け付けられないので要注意だ。「このシートを使ってる同業者は少ないです。良くも悪くも癖があるので……笑」と、藤井さんはいう。印刷もこだわっていて、多くの業者がCMYKで出力するところを、「K/CONCEPT DESIGN」ではRGBで出力。発色も美しいのだ。

 耐候性に関してはおおよそ2年ほど。もちろん保管環境で異なるのだが、紫外線が天敵かつ、キャラクターの肌色は紫外線に弱いので、青空駐車だと2年ほどが限界なんだそう。

 ちなみに「K/CONCEPT DESIGN」 、まだまだ強みがある。

 藤井さん、仕事の経験でCGやCADを触っていたので、それぞれのクルマの凹凸などの造形を、見てある程度理解できるとのこと。このスキル、ラッピング屋的にはかなり重要だ。痛車を仮にデザインするとなると、主役はやはり顔。PC上の画面で格好いいデザインはいくら作れても、貼るのは曲面だらけのクルマだ。なので最悪、貼ってみたらフェンダーに顔が来て歪んでしまう……とかもよくある話。

 しかし藤井さんには前途のスキルがあるので、それを見越してデザインを作成・修正できる。

 これも、「K/CONCEPT DESIGN」が高いクオリティを生み出す秘訣でもある。さらに藤井さん、ラッピング屋をやる側、ゲームやアニメのエフェクト関係の仕事も請け負っているとのこと。あまりにも多才なスキルをもっているのだ。

 最近は、キャラクターの誕生日や展示イベントに合わせて施工してほしいという人が多いそう。また、痛車以外にもレーシングカー風のラッピング、自身の撮影した写真を使ったラッピング、ワンポイントの施工も少なくない。ちなみに痛車の場合、最初は小さい面積から始めておきながら、最終的に全面にラッピングする人が多いんだとか。

「K/CONCEPT DESIGN」では、エンブレムはもちろん、ドアノブや窓など、バンパーやフェンダーなどなど、ラッピングが被る範囲はほぼすべて分解して施工するこだわりっぷりなので、精度はピカイチ。我々が使ったロードスターも、バラして施工してくれた。

 最後に気になる費用について聞いてみたところ藤井さんは、ボディサイズや印刷範囲によるが、大体25〜30万円前後でできるクルマが多いとのこと。今回我々が使ったロードスターのようなフルラッピングとなると、50万円前後が相場だそう。納期は要相談だが、だいたい1カ月前後とのこと。スケジュールや内容次第では、出張施工もできるそう。もちろん、フェンダーだけ、ボンネットだけともなれば費用も安価になるし、納期も短くなる。この価格設定、同業他社からは「安すぎない?」と心配の声も聞こえるらしく、藤井さんは苦笑い。

「最近はお金もちの人たちがリセールのためにスーパーカーにラッピングをする人もかなり増えました。元は白いボディだけど、ラッピングに黄色にして、傷を付けないようにしつつ、派手に乗る……みたいな。そういった人たち向けのものは高額なフルラッピングが多いですが、うちは痛車が多いので、価格はそんな感じです」と、価格設定の理由もひと言。先述のデザインもほぼ趣味ということもあって、それほど費用はのってないそう。デザインだけでも大歓迎とのことだ。実際、デザインのみ依頼が来て、施工は遠いので地元……なんて感じのお客さんもいるそう(その場合デザイン代は発生する)。藤井さんのデザインスキルが優れていることの裏付けだ。

 コスパに優れる点も「K/CONCEPT DESIGN」の強みかもしれない。

 それとこのお店、人気ステアリングブランドとして確固たる地位を確立しているイタリアの名門、MOMOの正規代理店でもあるので、日本で販売されているMOMOのステアリングは全種取り寄せ可能。希少な限定品が入荷することも!? ラッピングついでにステアリングのラッピングをお願いする人も少なくないそう。それと、カーシャンプーを代表とするさまざまなカーケミカルを展開する、ここ数年で人気急上昇中のUSブランド、Adam’s Polishes(アダムスポリッシュ)を取り扱っている点も見逃せない。

 藤井さんは、「なんかこういった工房って一見さん入りにくいじゃないですか? そういった敷居を下げるために日々活動していて、今後そう言った風に、雑談するだけに入ってこれるようなお店にしたいんですよね。あとバスとかトラックの施工はできないので、お店を大きくする野望もあります」と今後の展開についても語ってくれた。さらに藤井さんは、熱心なマツダファンでもあることから、「マツダ車、とくにロードスターの施工なら全世代お任せを!」とのことだ。

 さて、そんなラッピング職人の藤井さんとスタッフの齋藤さんが仕上げたCT&WEB CARTOPロードスターは、「これ本当に白いボディだったのか!?」と思えないような、見事な2色仕様に。

 周囲からはかなり評判がよく、会場でもかなり目立っていた。これも「K/CONCEPT DESIGN」の協力があってこそ(今回の協力にあたり、ボディサイドにも店名を入れさせていただいている)。

 と、匠の技で完成した我々の新マシン、夜間走行時に点灯する識別用LEDに「色が変化する」ものを取り付けてしまい、これが点滅とみなされてレギュレーションに抵触してペナルティ。SNSで「ゲーミングロードスター」と呼ばれてしまったのは恥ずかしいばかり……。それでも前述のとおり、10位で無事にフィニッシュ。

 カーラッピングや痛車などをやってみたいと思った人はもちろん、気になっている人もぜひ気軽に「K/CONCEPT DESIGN」に相談してみてほしい。きっと理想の答えが返ってくるはずだ。

K-concept design


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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