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ヤマト運輸が「バッテリー交換式」EVトラックで実証実験を開始! この先の問題は「バッテリー交換の方式」が統一できるかどうか

ヤマト運輸が「バッテリー交換式」EVトラックで実証実験を開始! この先の問題は「バッテリー交換の方式」が統一できるかどうか

この記事をまとめると

三菱ふそうトラック・バスがバッテリー交換式EVトラックの公道実証を開始した

■eキャンターを用いてAmpleのバッテリー全自動交換ステーションでバッテリーを交換

■ヤマト運輸が実際に京都市内の集配に使用してデータを収集する

ヤマト運輸が京都市内の集配に使用

 地球環境問題の観点から、カーボンニュートラルに向けて開発が進むEVトラック。

・1回の充電でどれだけ走れるようになるのか
・バッテリー搭載による積載効率の低下対策をどうするか
・どうやってコストダウンを図るのか

 など、解決するべき課題は山積みしているが、水素、バイオアルコール、CNGといった地球にやさしいエネルギーの開発とともに、日々関係者の開発努力が続いている。

 こういった問題のひとつを解決するために、トラックメーカーが大きな動きを見せた。2023年10月に開催された「Japan Mobility Show 2023」で、いすゞ自動車がバッテリー交換式ソリューションを発表したのである。これは、従来トラックの燃料タンクがあった位置(左右両側)にバッテリーを配し、専用機器を使用して横から交換するシステムである。このときは片側だけのデモンストレーションであったが、実用化の際には両側から一度に行う方法をとるという。

 これに対して、三菱ふそうトラック・バスは下から交換する方式を採用し、同展示会に出展。

 これを踏まえて2024年8月にバッテリー交換式EVトラックの公道実証を発表したのである。この実験にはeキャンターを使用し、Ample(アメリカ・サンフランシスコに拠点をもつ、バッテリー交換システムを開発・販売するスタートアップ企業)の交換モジュールを採用した。

 Ampleは京都市において、2024年3月にENEOSやエムケイ(京都最大手のタクシー事業者)と連携し、日本初となる「EV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験」を開始している。この実験には地元自治体のほか、銀行や保険会社など大手事業者などが参加・協力をしているが、三菱ふそうトラック・バスもこのシステムを利用するわけだ。

 実験に使用されるeキャンターは、ヤマト運輸が実際に京都市内の集配に使用してデータを収集する。バッテリーの交換時間は約5分に抑える予定で、急速充電で約30分かかっていたことを考えれば、輸送効率は格段に向上するといえよう。この方式は走行範囲が限られていて営業所などの拠点をもつ、小型配送トラックに適したシステムといえよう。しかし、実験結果を踏まえて新たな工夫を加えれば、中・長距離輸送に応用の道が開ける可能性もある。

 このような開発を積極的に進めているのは、必ずしもこれらの事業者だけではない。海外トラックメーカーはもとより、数多のベンチャー企業も積極的に挑戦していることだろう。ここで問題になるのが、仕様、形式、方式といった「基準」である。たとえばかつて、ビデオデッキの業界では「VHS方式」と「ベータ方式」が並立していた。それぞれメリット・デメリットはあるものの、ユーザーからすれば統一されていた方が便利であるし、市場ボリュームの観点からはコストダウンのネックになりかねない。

 これは、このバッテリー交換システムでも同様のことといえるのだ。これまで国土交通省が音頭をとってEVの国内技術に対する「国連基準化」を進めてきた。電動車の安全性、電動車の静音性対策、電動車の出力試験法、電動車の車載式バッテリーの耐久性などがそうで、こういった基準の統一が技術発展に貢献している。

 2024年1月、同省は「バッテリー交換式EVの国連基準の策定推進」を発表した。我が国で開発・実証が進められるバッテリー交換式EVの技術を取り入れた国際ルール(国連基準)の策定を実現するため、官民の協力の下、カーボンニュートラルセンターが立ち上げられ、関係者会合が同月に開催された。日本技術はよく「ガラパゴス化」などといわれるが、トラックのEV化はオールジャパンで推進し、世界標準になっていくことが期待されているのだ。

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