「トラックの脱輪事故」が増えた理由にJIS方式からISO方式への変更がある! 日本の環境に合わない「ホイールボルトの規格」は早急に対策が必要 (2/2ページ)

「ISO方式」は日本の環境に合っていない可能性が高い

 しかし、細かく仕様を見ていくと、これが日本の使用環境には合っていない可能性が高いのである。まずJIS方式では左側のボルトナットは正ネジではなく、逆ネジだったのだが、ISO方式は左右どちらも正ネジだ。

 どうしてJISでは逆ネジだったのかというと、日本は左側通行で路肩に向かって傾斜がついている。そのため左側の車輪に荷重がかかりやすく、左折時には小さくまわるため、車輪に捩れる力が大きく働く。車輪の回転方向が半時計方向なので、正ネジでは緩む方向に力がかかってしまうのだ。

 右側通行の国ではこうした問題は発生しない。2022年には国交省国交省自動車局整備課がホイール脱落事故の91%がISO方式のホイールボルトナットを採用していることを把握している。

 ISOとJISの違いはネジの回転方向だけではない。ホイールとナットの座面形状も違う。JISはホイールの締結部に球状の窪みをつけて、ナットの球面座がそこに食い込むようになっていた。しかしISOは平面座という真っ平なナットで締め付けているだけだ。

どうして増し締めが必要なのか

 面座のISO方式のナットは、ホイールをナットの表面で挟み込んでハブと固定しているため、走行中の振動などで馴染みが進むことで締め付けトルクが減少する。これが緩みにつながるのだ。

 1本が緩むと周囲のボルトの負担が増えて緩みやすくなり、回転方向や振動、捩れといった外力でホイールボルトに直接力がかかるようになり、ボルトが折損し次々と残るボルトの負担が増えて脱落事故が起こるのだ。

 定期的な点検を、それもJIS規格時代よりも増やすことが必要となるが、人手不足の現在はなかなか管理し切れない部分もある。また、増し締めも、きちんと締め付けトルク管理を行なっていなければ返って危険性が高まることもある。オーバートルクで締め過ぎの状態が続けば、やはりボルトが折損することにつながるからだ。

 それでもホイール脱落事故は歩行者や周囲の車両乗員の生命を脅かすほど危険なことなので、国交省はこうした事態を重く受け止めて、何らかの追加対策を導入してもらいたいところだ。


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