この記事をまとめると
■レースでは同じマシンが複数台出場しているケースが目立つ
■データ収集やチームプレイを目的としている場合が多い
■同じマシンであってもチームやドライバーでマシンのセッテイングは異なる
同じマシンがレースに出ているのはチーム戦略が影響していた
ワンメイクレースは別として、多くのレースでは、各クラスに同じ車両が何台か出場している。
たとえば、日本のスーパーGTのGT500クラスには、日産のフェアレディZが4台、トヨタのGRスープラが6台、ホンダのシビックタイプRが5台エントリーしていた(2024年シーズン)。
チームごとに独自の車両を用意することになっているF1でも、各チーム2台体制で戦っているので、同じマシンが2台ずつレースに出ている。
これらのレースは、ドライバーズタイトルのほかチームタイトルも争っているので、チームプレイを行ったほうが有利でもあるし、マシンの開発を進めるうえでも、複数のクルマで走ったほうがデータもより多く集まり開発スピードが速くなる。また、新人ドライバーを発掘、育てるという意味でも、各陣営、2台以上のマシンを走らせる意義は大きいはずだ。
これが同じレースに同じマシンが複数出走している主な理由。
一方で、マシンはたとえ同じ車種であったとしても、中身は決して同一ではない。そもそも本格的なレーシングマシンは、ほとんどのパーツがワンオフ。モノコックやボディに使うカーボンコンポジットも、炭素繊維のシートを手作業で何層も積層して作っていくので、まったく同じ製品が出来上がることはないし、エンジニアが違えば当然セットアップにも違いがある。シャシーが同じだとしても、タイヤやダンパー、ブレーキなどはチームごとに違う場合も多い。アップデートを入れる順番も等しくはない。
また、スーパーGTのプレシーズンテストなどでは、まったく同じ仕様のマシンを2台用意して、同じメーカー系のドライバーで乗り比べることがあるが、そうしたときでもドライバーが「いい」と評価するのは、どちらか1台に偏るそうで、レーシングカーはふたつとして同じものはないことの裏付けともいえる。
オール「現物合わせ」で、細かいところはけっこう違うのが、レーシングカーというシロモノなのだ。