【試乗】ジープなのにFFでEVかよ……なんて考えは捨ててOK! アベンジャーはきっちり「ジープ魂」が注入されていた (2/2ページ)

フラットで姿勢変化の少ない走りが好印象

 ドライブモードスイッチはセンターコンソールに設置されており、スポーツ・ノーマル・エコ・サンド(砂地)・マッド(泥寧)・スノー(雪)の合計6モードから選択可能だ。デフォルトではノーマルモードとなっていて、今回の試乗コースとなった市街地での一般道にはベストマッチしている。エコ、スポーツも試したが、これら舗装向けの3つのモードはアクセルレスポンスが異なる点が主な差異となる。

 スポーツモードではクイックにトルクが立ち上がり加速性に優れる特性となり、エコではアクセルレスポンスを落として加速を鈍らせ電費を向上させている。デフォルトでもあるノーマルモードが、アクセル操作性と加速感がマッチしていて、市街地では一番走りやすかった。

 試乗出発時は満充電にされていてメーター表示の航続可能走行距離は400kmとなっていた。カタログのWLTCモードでは486kmだが、走行パターンで航続可能距離は常に変化する。市街地走行メインでは400km前後の航続距離であると考えて走行プランを立てると不安なくドライブできそうだ。

 充電はCHAdeMOの急速充電に対応しているが、V2H(クルマから家への給電)などの外部給電は装備されていない。この辺は補助金にも影響を与える部分であるが、車両価格にも大きく影響するので、近年は未装備モデルが小型の低価格車には増えている。また、車内100Vの電源コンセントも装備していない。電力使用は走行上の実用性に特化させたBEVといえる。

 走行フィールは、コーナーでの車体姿勢がフラットで姿勢変化が少なく好印象だ。フロア下のバッテリー搭載位置により重心が低い恩恵だろう。ただ、路面の継ぎ目や段差通過時にリヤサスペンションのハーシュが強く感じられ、快適性はやや損なわれる。これはフットプリント内重量が大きく、硬いバネを装着しなければ車両重量を支えられないことの反動だ。

 ジープ車は悪路を走破するイメージが強く、ラングラーPHEVもモーターとエンジンをメカニカル4WDで走らせ「4×e」と呼称しているが、アべンジャーはFFゆえに「e」とだけエンブレムの車体表記がある。それでも、車体ディメンションとヒルディセントなど駆動力制御で悪路走破性を高める努力を放棄していないので、ジープを名乗るに相応しい。

 タイヤはポーランド製の「グッドイヤー・エフィシェントグリップ2 SUV」で215/60R17サイズ。車両重量を支えるサイドウォールの強さは低燃費タイヤとしても機能するが、快適性とのマッチングは少し残念に感じた。電費は市街地試乗ルートにおいて7km/kWhほどだった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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