犬が乗って快適なら人が乗っても快適
続いてコンパクトミニバン部門では、2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーをミニバンとして初受賞したホンダ・フリードだ。
その完成度の高さは専門家をも納得させるもので、3列シート、2列シートのほか、ライバルのトヨタ・シエンタにない2列目キャプテンシートの6人乗りを揃えているところも特徴的だが、なにしろ走行性能は上質かつ快適無比な乗り心地、驚くべき車内の静かさ、3列目席の格納のしやすさなど、多岐にわたる(電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能もこのクラスではフリードだけ)。
その特徴部分のなかでも、乗員はもちろん愛犬にもやさしい装備として挙げられるのが、クラス初の後席用リヤクーラーの用意。これまで、コンパクトミニバンではコスト面からも、後席用エアコン吹き出し口は装備されなかったのだが、新型フリードには前席でも操作できる後席用クーラー(5段階の風量調整が可能。リヤ温度は前席のエアコン操作パネルで調整。暖房も行えるエアコンではない)を天井に新設定。
シエンタはそこがサーキュレーターだから、後席の、とくに暑い時期の空調環境面では新型フリードが大きくリードすることになる。
これで2024年の夏の酷暑のような暑い日でも、1年中毛皮をかぶっている犬も後席(3列目席含む)で快適に過ごせることになる。クロスターの場合は汚れに強いシート生地を採用しているところも、愛犬家にとってうれしいポイントではないか。もちろん、後席の窓部分に、日差しを和らげ、外からの干渉を抑制してくれるロールサンシェードが備わるのもドッグフレンドリーポイントだ。
そして愛犬と暮らし、愛犬とのドライブ機会も多いモータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーでもある筆者が、新型フリードの開発陣と話して感動したのが、新型フリードでは操安性とともに車内の静粛性を、ミニバンの特等席である2列目席にフォーカスして開発が行われた事実だ。
一般的なクルマの操安性や車内の静粛性の開発は前席で行われるのが当たり前なのだが、「ミニバンではそれで正しいのか?」という点に立ち戻り、新型フリードではそうした開発が行われたのである。それはズバリ、後席乗員はもちろん、特等席が後席となる愛犬にも大きなメリットをもたらしてくれるのは当然。車内でどこかにつかまれず、聴覚にも優れた犬にとっての超快適空間がもたらされたことになる!
最後に紹介するのは、最強・最高のドッグフレンドリーカーであると心底思っているスバ・レイバックである。スバル自慢のAWDであり、オールシーズンタイヤを履いていながら、驚異的な車内の静かさと高級サルーンに匹敵する乗員・愛犬のどちらにとっても快適無比な乗り心地を実現。
そしてここでの評価ポイントとなる後席についても、居住性のゆとり、シートのかけ心地のよさはもちろん、暑がり、寒がりの犬にうれしい後席エアコン吹き出し口を完備(クラス下のクロストレックには装備されず)。
さらに、隠れドッグフレンドリーポイントといえるのが、後席4:2:4分割の可倒式である点だ(クラス下のクロストレックは6:4分割)。それがどう愛犬に優しいのかといえば、短距離、やむなく大型犬などをベース車両のレヴォーグに準じるラゲッジルームに乗せた際、4:2:4分割の”2”部分をアームレストとして倒すことで、4名乗車でもキャビンとラゲッジルームに幅220mmのスルー空間ができ、ラゲッジルーム部分にエアコンの風が届きやすく(後席エアコン吹き出し口も完備)、また、愛犬と飼い主のアイコンタクトが容易になり、お互い、安心してドライブを楽しむことができるようになるである。
試しに、停止時にわが家の自称自動車評論犬のジャックラッセルのララをラゲッジルームに乗せてみたところ、「これなら快適、寂しくもないわん」とのことだった。
ということで、ここで紹介したスペーシア、フリード、レイバックは後席のクラス随一の快適性の高さに加え、愛犬を後席に乗せるのに最高最適なクルマたちであると、ドッグライフプロデューサーとしての立場からも断言したい。同時に、犬を飼っていないユーザーにもお薦めな後席の快適性が極めて高い3台でもある。