いまどきのクルマは「暖機運転不要」とは言い切れない! エンジンとオイルによって考えるのが正解だった (2/2ページ)

現代のクルマであれば暖機運転はそこまで必要ではない

 エンジンは、エンジンオイルの性能ありきで設計されていますから、たとえば1990年代には、その当時あったオイルの粘度に合わせたクリアランスでエンジンが設計されています。なので、最新のオイルを入れると粘度不足や油膜切れを起こして、エンジンにダメージを与えたり、最悪焼き付くこともあり得ない話ではありません。

 年代が新しくなるにつれて、エンジンオイルには低燃費性能が求められるようになり、とくにこの10年は、低粘度のオイルが使われるようになります。当然自動車メーカーも低粘度オイルに合わせたエンジン設計となっているわけです。

 粘度についてはドーナツマークの真んなかの部分に記されています。10W-30とか、最近では0W-30なんてオイルも珍しくなくなっています。SAEはSociety of Engineers(=米国自動車技術者協会)の略で、オイル粘度に関する統一規格です。

 Wはウインターを意味しており、Wのついた左側数字は低温粘度を示しています。低温での性能は何度までエンジン始動時にオイルが適切に流れる能力を示します。

 具体的には0Wは-35度以下、5Wは-30℃以下、10Wは-25度以下、15Wは-20度以下、20Wは-15度以下となっています。近年ではエンジンオイルの抵抗を少なくすることでも燃費性能を高めているのですが、その結果、低温時の始動性もよくなっているというわけです。

 ちなみに、右側の数字は100度のときのオイルの動粘度を示しています。数字が大きいほうが動粘度が高く、高負荷時の被膜が切れにくいことを示しています。

 ……この説明だけだと、右の数字が低い最新のオイルは高温時の油膜保持性がよくないということになります。傾向としては間違いではありませんが、最新のエンジンオイルでは、低粘度でも優れた被膜性能を備えているオイルもあります。

 高温高負荷時の被膜性能を表す指標としてはHTHS粘度という、油温150度での高温高せん断粘度があります。これを参考にすると、粘度表示が低くても高せん断性を備えたオイルを選ぶことができます。

 話が逸れましたが、このようにオイルの性能や、クルマの年式によって、エンジンをかけてすぐに走り出しても問題ないクルマ、エンジンが温まるまで暖気運転をしたほうがいいクルマがあるのがわかると思います。ここ5年くらいに登場した新車でいえば、暖機運転は最小限で走り出してもほぼ問題ないといっていいと思います。むしろ、環境の観点から見てもむやみに暖気するのはよろしくありません。アイドリング禁止条約を制定している自治体も多いですからね。

 旧いクルマについては、極端に低粘度のオイルを入れると、各部のクリアランスが大きすぎてエンジンを損耗してしまうリスクが高くなります。なので、年式にあった規格のオイルを入れるのがいいと思います。暖機に関しては、個人的には、あまりエンジンオイルだけにとらわれず、可能であれば低負荷走行で走りながら暖機運転をするのがより好ましいでしょう。

 とくにマニュアルミッション車の場合は、ミッションオイルの暖機も必要となるので、走りながらの暖機が必要になります。

 そんな具合に、自分のクルマのメカニズムや使っているオイルに注意を向けてクルマと接してみるのも,面白いのではないかと思います。


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