【試乗】オーテックが本気出すとセレナはこうなる! 加速もハンドリングも静粛性も向上した「AUTECH SPORTS SPEC」に惚れた (2/2ページ)

走りだけでなく車内も空間も上質

 次にシャシーのアップデートについて紹介しよう。

 まず、足まわり面ではベースモデルと比べて、スプリングレートを強化しフロントで15%、リヤを20%高めている。スプリングを硬くするとロールやピッチングが抑えれるようになる半面、乗り心地も堅くなってしまうため、ショックアブソーバーの特性も見直し、乗り心地を損ねずに腰高なワンボックスカーにありがちな大きなロールをしっかり抑えているのが特徴だ。

 さらに、デザイン性と走行性能を高めるためにホイールを17インチ化し、タイヤはグリップ性能、ウエット性能、転がり抵抗などのバランスが非常に高いスポーツタイヤである、ミシュラン・パイロットスポーツ5を採用したこともポイントだ。タイヤの扁平率が下がったことでタイヤ自体のたわみやヨレが少なくなるため遅れのないハンドリングを実現することが狙いとなっている。

 実際に走らせたなかで印象的だったのは、ロールの少なさとステアリング操作に対する正確なハンドリング性能だ。タイトコーナーなどでの大きな荷重がかかるシーンや、高速域での素早いステアリング操作でも不安定なロール感や動きの遅れがなく、とても自然で常に安心感をもって走ることができた。

 実際のところ、「パイロットスポーツ5の非常に高い性能に足まわりが負けてしまうのでは?」と正直心配していたが、そんな心配はすぐに消えてしまうハンドリング性能が実現していた。ただし、路面のつなぎ目や段差などの突き上げ感だけは若干角を感じたが、これくらいなら許容範囲の内だろう。

 足まわりを強化するとより高い剛性が必要になる。そのために車体補剛を目的とした剛性アップパーツとしてフロントとリヤにそれぞれクロスバーを装備した。さらに、最終的な車体の微振動を抑制させるためにYAMAHA製パフォーマンスダンパーをリヤ側のみに搭載している。YAMAHAが用意する何十種類ものパフォーマンスダンパーを開発チームが厳選していき、最終的に導き出したのがリヤに専用チューニングした1本のパフォーマンスダンパーを搭載することだった。

 これらの補強パーツによりステアリング操作に対する応答性が高められ、上質なハンドリングが生まれているのだ。

 走りだけではなく、車内空間の上質さも追及しているAUTECH SPORTS SPECは、上質なインテリアデザインはAUTECHグレードそのままに、静粛性を向上させるためにフロントサイドガラスに遮音ガラス(LUXIONで導入)を、このモデルでも採用している。

 走行中の振動や静粛性が向上しており、とくにガラスの遮音性が高くなっていることで車内の会話や音楽を楽しめる快適な車内空間が出来上がっていた。ガラスを軽くコンコンと叩くだけで、打音や音の収束具合がフロントとリヤで大きく違うことに誰でも気付くことができるほどに音のとおり方が変わってくる。

 フロントタイヤから発生する音や、ミラーまわりから発生する風切り音が圧倒的に抑えられているのはこの遮音ガラスの恩恵だ。将来的にリヤサイドガラスにも遮音ガラスの設定が出来ればなお上質な室内空間が出来上がるので、ぜひ検討してもらいたいものだ。

 セレナAUTECH SPORTS SPECは従来のエクステリアやインテリアデザインをスポーティに仕上げるだけでなく、人や荷物をたくさん載せるミニバンにも走りの上質さを求める人たちに対する日産の出したひとつの答えだろう。

 その表れとして、インテリアに装着されたエンブレムには、TUNDE by NMC(NISSAN MOTORSPORTS & CUSTOMIZING)が掲げられている。NISMOとAUTECHの両ブランドをもつNMCだからこそたどり着いたコンフォート性とスポーツ性さの絶妙なバランスを提供するのがセレナAUTECH SPORTS SPECなのだ。


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