安くて環境にもいいならなんで広まらない? タクシーが使うLPGガスがけっこう有能だった (2/2ページ)

燃費もよく燃料代も安いが……

 さて、このLPGを燃料とするクルマだが、普及し始めたのは1960年代に入ってからのことで、現在と同じくタクシー車両としての登場だった。エンジンの基本構造はガソリン車やディーゼル車と変わらず、燃料タンクからエンジンの燃料供給装置までがLPG専用構造となっている。

 LPGを燃料として使う車両は、LPGのみを燃料として使うLPG専用車、LPGとガソリン(始動時、暖機運転時)を併用するバイフューエル車、そしてLPGと電気モーターを使うハイブリッド車の3タイプにわけられる。

LPGガスタンクと専用ECUなどの装備類

 気になる性能だが、基本がガソリンエンジンと同じ仕様とした場合、出力/トルクが80〜90%程度、燃費性能はほぼ同等、二酸化炭素の排出量が6〜12%程度少なくすることができ、内燃機関として見た場合、環境性能に優れたエンジンということができる。また、1リッターあたりの燃料価格は、だいたいガソリンの6割程度と見てよく、経済性に優れることも大きな特徴となっている。タクシー仕様車がLPG仕様となるのは、こうした特徴が背景にあるからだ。

 こうしてLPG車両の特徴を並べていくと、タクシーといった営業車両にとどまらず、個人オーナー車両として見た場合も利点は多いが、やはり最大のネックとなるのが燃料を補給するLPGスタンドの少なさだ。日本の場合、法規上の問題からセルフ方式のスタンドは認められず、専用のオートガススタンド(オートガスステーション、LPガススタンド)での補給となるが、これの数が少ないのだ。

 車両を保管する場所が、タクシー会社が拠点を構える地域なら、その付近にLPガススタンドはほぼ必ずあるので問題はないと思うが、日本全国レベルで眺めた場合、2022年時点でその絶対数は1330カ所と少なく、いまもその数は減る傾向にあるようだ。

 常に車両保管地点を中心にクルマを使うケースならさほど問題はないが、長距離移動、とくに郊外エリアが移動の目的地となるような場合には、どこにLPガススタンドがあるか、また、その営業日、時間などを確認しておかないと、簡単に動けなくなってしまう可能性が高い。

 燃料価格や環境性能など、ガソリン/ディーゼル車と較べた魅力は大きいが、ネックとなるのはそのインフラだ。EVやe-fuel(合成燃料)の今後の普及までを考えると、現状LPG車の存在価値は、ある種限定的といってよいのかもしれない。


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