ガラパゴスでは立ち行かなくなりつつある日本市場
タイ、インドネシア、そしてマレーシアは東南アジアにおける「三大自動車生産国」とされている。しかし、マレーシアを除けば、自国量販ブランドというものは存在しない。
そのマレーシアでも、自国量販ブランドのプロトンは中国・吉利(ジーリー)汽車傘下となり、そのラインアップはほぼジーリー車ベースで、2017年にジーリー傘下となった当初は、中国からのCBUとして販売がスタートし、段階的にマレーシア国内でのCKDに切り替わっている。
マレーシアでも人気の高い、トヨタ・カローラクロスも当初はタイからのCBUとして販売されていたが、その後マレーシア国内でのCKDモデルに切り替えられた。過去の報道によると、トヨタ初のマレーシア国内でのハイブリッド車のCKDということで大いに話題になった。
また、新型コロナウイルス感染拡大による新車販売の落ち込み対策としてマレーシアでは、2020年6月に新車購入時に10%課税される売上税について、CKD車は無税、CBU車は5%に減免する措置を、結果的に2022年6月まで実施していた。このような販売促進政策などを打つときにCKDなのかCBUなのかで差をつけるなどしているようである。
CKDを国内生産、CBUを海外からの完成車輸入とすると、ここのところ日本国内では、ホンダWR-Vやスズキ・フロンクスなど海外(いずれもインド)からの完成車輸入モデルが相次いで話題となっている。
長い目で見れば少子高齢化による人口減少が進み日本国内での新車販売も減少の一途をたどることが予測されている。さらに少子高齢化で働き手不足となり、現状では外国人労働者や自動化での対応と働き手不足の進行は自動車だけではなく日本の製造現場では追いかけっこが続いている。
市場規模の縮小が極端に進めば日本の消費者に合った、日本製造による日本市場オリジナルモデルという存在を困難なものとしていく(生産力や国内消費だけではコストが賄えないなど)。そのような状況解決の先駆け的な事象が、WR-Vやフロンクスの完成車輸入にあるように見えてしまう。
日本でも、日本メーカー車のなかであっても「CKDなのかCBUなのか」というものが注目されることになっていくかもしれない。ただ、東南アジアなどでは生産台数がそれほど多くならない多くの高級車がCBU、量販車種がCKDという傾向が目立つが、日本における日本メーカー車では逆に量販車がCBU(コストアップを防ぐために)、高級車がCKD(多少割高となっても台当たり利益が良いので国内生産でも賄える)となっていくのかもしれないと考えている。
また、残念な話だが、日本における賃金は世界的に見ても低いことが話題となっているので、優れた労働力(賃金レベル次第では働き手不足のなかでも集めやすい)とともに政府補助も期待できるので、海外ブランド、とくに中国メーカーなどは日本に生産工場を構えたりすることは、台湾の半導体工場進出などを見ると、まったくありえない話ではないようにも見える。