アメリカでは車種でその人の地位がわかる
アメリカでは、トヨタ・カムリ、ホンダ・アコード、日産 アルティマのクラスが日本でのカローラセダンのようなポジションとなり、お父さんの通勤用車などとしてよく売れていた。ここ最近はクロスオーバーSUVの人気が高まり、カムリなどに代わり、トヨタRAV4、ホンダCR-V、日産ローグ(日本でのエクストレイル)がよく売れるようになっている。アメリカにおけるSUVは、2列シート車がパーソナル、3列シート車がファミリーユースとしてかなり明確に購買層が異なっているとも聞いている。
トヨタブランドであるカムリは、企業における課長さんのような中間管理職の人などが好んで通勤用として乗っていたとのこと。そして、部長に昇進するとレクサスESにアップグレードすることがよくあったようだ。部長になれば専用個室が与えられるなど、社内での待遇もガラリと変わり、当然収入もアップする。
アメリカではローンやリースで新車を所有することになるので、課長職ぐらいの立場ではレクサス車がほしいと思ってもなかなか融資の審査がとおらないのだが、部長になるといきなり審査がとおりやすくなるようである。
アメリカではこのような事情から、身の丈にあったクルマにしか乗ることができないので、カムリからESへの乗り換えは、その人の社会的ステータスがアップしたこともアピールすることになるのである。
「レクサスのなかでもESはとにかく売りやすいモデルでした。とにかくほしいという気もちも先行しているのか、値引き交渉などもほぼなく、すぐに契約がもらえました」とは、かつて南カリフォルニアのレクサスディーラーでセールスマンをしていたA氏。
このカムリとESの関係のようなものが、グランドハイランダーとTXでも構築されているものと考えれば、それがTXがよく売れている背景のひとつなのではないかと筆者は考えている。
トヨタは、「バリューフォーマネー」的なクルマ作りにとくに長けたメーカーであり、そのためTXもFスポーツを除けば6万ドル前後(日本円に換算すると約930万円)でありながら、そのパフォーマンスや質感は確実にそれ以上のものとなっており、ハイランダー系と比べても明らかに「格の違い」が感じられるところも人気を高めているように見える。
日本国内ではLBXの人気が高まっているが、LBXもボディサイズの違いはあるものの、同サイズトヨタブランド車に比べれば、1.5倍ほど価格が高いだけで得られる高級イメージがそれ以上というところで人気が高まっているものと感じている。
ちなみにアメリカにおいては、TXよりESのほうが販売台数が多いのだが、これは多くのレクサスディーラーにおいて、点検・整備代車としてESを用意しているところも大きいので、純粋な小売りではTXのほうが多いのではないかと考えている。
「日本でもTXを……」という話が出てもおかしくないのだが、残念ながら日本国内では3列シートのクロスオーバーSUVをファミリーカーとして使うというニーズはそれほど多くないし、価格的には超高級ミニバンのLMが見えてくるあたりになりそうなので、それならLMを選ぶ……という流れが目立つことが予測できる。したがって、国内導入はあまり期待できないものと考えている。