中国メーカーもKLIMS会場にHEVやPHEVをもち込む
KLIMS会場内にブースを構えた中国系ブランドはGAC(広州汽車)、AION(広州汽車系BEVブランド)、GWM(長城汽車)、MG(上海汽車系)のみであった。ほかにはBYDオート(比亜迪汽車)、チェリー(奇瑞汽車)、NETA(哪叱汽車)などが市場参入している。マレーシア国内でのBEV販売トップ3はほぼ同台数で、テスラ・モデルY、BYD ATTO3、BYDシールとなっており、マレーシアでもBYDが強みを見せている。
ローコストBEVとしてタイでも一時爆発的に売れたNETAは2023年末にマレーシアに市場参入しているので、前出の統計ではほとんど売れていない結果になってしまっているが、これが2024暦年締めでの年間販売台数でどこまで伸びを見せているかというものが興味のあるところ。
売れ筋のBYD ATTO3のマレーシア価格が14万9800リンギッド(約510万円)と、日本やタイよりもやや高めとなっている。マレーシアの平均年収が133万円(日本は調べると461万円)なので、平均年収の約4倍の価格のATTO3がよく売れているということは、かなりの高所得者層がユーザーとなっているものと考えられる。NETAでも廉価版で約410万円ということを考えると、充電インフラが十分ではないことも含めて、“ローコストEVで爆発的に普及させる”というフェーズには至っていないように見える。
それもあるのかBYDではシールをベースとしたクロスオーバーSUVでATTO3の兄貴的モデルとなる「シーライオン7」がラインアップされており、このモデルが注目されている。
また、「マレーシアは産油国だからなぁ」として、BEV普及にタイほどのめりこめない気もちの問題のようなものがあると指摘する声もある。
話を聞く限りは「とにかくマイカーがほしい」といったエントリーレベルのお客が多いなか、所得に余裕があり夫婦共働きで複数保有している家庭も少なくなく、新車需要の二極化が進んでいる。複数保有家庭ではそのなかの1台をBEVにしてみようかというニーズもあるようだが、それでも日系HEV(ハイブリッド車)へ流れるケースのほうが目立っているようである。事実、ショー会場でもGWMやMGはHEVあるいはPHEV(プラグインハイブリッド車)のほうを目立つように展示していた。
政府としては次世代を見据えてBEVに傾倒していきたいのだろうが、マレーシアの現状を見る限りは、日本メーカーの燃費性能そして燃焼効率に優れた純粋なICE(内燃機関)や、得意分野のハイブリッドユニット搭載車を、例えばダイハツ系モデルを生産する国民車ブランド「プロドゥア」では、ダイハツの「eスマート」ユニットを積極搭載させていくという方向もありなのかもしれないと見ている。
今回のKLIMSで日産がキックスのeパワーユニット搭載モデルを発表したが、このあたりが現実を見据えた正しい流れなのかもしれない。