経営統合してもホンダ・日産それぞれのブランドは存続
ところで、SNSなどでは「日産とホンダでは被るラインアップが多く、シナジー効果が期待できない」といった批判もあるようだ。たしかに両社とも北米が主要市場であるし、日本では三菱を含めて軽自動車がライバル関係となっている。
だが、いまラインアップが重なっているから効率が悪い……という判断をするのもミスリードになる。経営統合の検討というのは、そうした効率の悪い部分をどうやって解決できるかを検討することであり、そこにシナジー効果の目途が立たなければ、経営統合は進んでいかないだろう。なにしろ、あくまで検討段階であって、上で示したスケジュールもすべて予定となっている。統合してもうまくいかないと結論づけられれば、このプロジェクトがポシャってもおかしくない。
冒頭で、三菱自動車がホンダと日産の経営統合検討へ参画・関与することの覚書も締結したことを記した。すでに日産と三菱自動車は幅広い領域で協業している仲であって、同じ日本の自動車メーカーとして、蚊帳の外というわけにはいかないというのは、多くのユーザーが感じていることだろう。
しかしながら、各社のアライアンスや協業というのはほかにも広がっている。長年の関係もあり、日産はルノーとさまざまな領域で協同プロジェクトを進めている。ホンダにしてもGMとの協業を続けており、CR-V e-FCEVの燃料電池ユニットは、GMと共同開発したものであるのはご存じのとおりだ。
もし、ホンダと日産が経営統合したとき、ルノーやGMとの関係はどうなるのか。記者会見において三部社長が説明した内容を整理すると、経営統合した場合でもルノーやGMとの関係を断ち切るわけではなく、緩やかなアライアンスを拡大していくという。
自動運転や、そこに大きくかかわるSDVといった領域においてはスケールメリットを活かしてデファクトスタンダードを取ることは有利に働く。あくまで仮の話ではあるが、ルノー・日産・三菱自動車・ホンダ・GMにおいて、ユーザー利便性が共通するようなことになれば、世界的な自動車メーカーの勢力図は一気に書き換わるかもしれない。
ところで、記者会見においてホンダと日産の共同持株会社についてはホンダ側が取締役の過半数を占め、トップもホンダが指名すると発表された。これは現時点での上場株式の時価総額(ホンダ:約6.74兆円、日産:約1.67兆円)の差を考えれば、資本主義においては当たり前の話である。
ひとまずは、各社のブランドは維持するとされているので、ホンダが日産を吸収合併するような話ではないことも再確認しておきたい。