「F1表彰台」「インディ500を2度優勝」の佐藤琢磨の息子「凛太郎」のF4挑戦はいかに! 最速の遺伝子をもつルーキーの闘いを追った (2/2ページ)

着実に成長を見せる期待の新人

 そんな凛太郎選手はレースを通じて着実にスキルアップを重ねているようで、PONOS RACINGでアドバイザーを務める小河原宏一氏は「初めて乗るマシンだったし、序盤のテストは雨が多かった。それにクルマのデリバリーも遅かったので、凛太郎選手は苦労していましたが、鈴鹿は走り込んでいるだけあって、第3戦の鈴鹿あたりからスムースに対応できるようになりました。うちは2台体制なのでデータを比較しながら、アドバイスをしていきましたが、まだ若くてクセがないこともあって、すぐに吸収して、今は上位を争えるレベルになってきました。ストイックに突き詰めていけるドライバーなので今後が楽しみですね」と高く評価。

 同時に父である琢磨選手のサポートも凛太郎選手のスキルアップに影響しているのだろう。筆者が取材を行った鈴鹿ラウンドにも琢磨選手が凛太郎選手のパドックやグリッドに訪れるほか、パドックでは動画やデータロガーを見ながらアドバイスを行っており、凛太郎選手によれば「スクールの校長でもありますが、週末は父として教えてくれていますね」とのことだ。

 この凛太郎選手のFIA-F4での活動について、父の琢磨選手は「2024年は鈴鹿ぐらいはスポット参戦できたら……という話をしていたんですけど、PONOS RACINGさんのサポートでフル参戦させてもらえることになりましたので、実戦でのスキルアップもさることながら、素晴らしい経験を積ませて頂けたと思います。自分と凛太郎では、ドライビングを含めたレースへのアプローチは異なりますが、それも個性だと思っているので見守っています。フラストレーションを感じることもありますが、これは多くの二世ドライバーの父親が抱えているものだと思いますので……」と苦笑い。

 さらに凛太郎選手と琢磨選手の違いについて、「自分の場合は着地点が限界の向こう側で、一気にそっちへ行ってから戻ってくるスタイルなんですけど、凛太郎は自身で納得しながら進んでいく。そこがもどかしい部分でもありますが、その反面、レースのアプローチでは接触も少なく着実に抜いてくるなど、自分にはなかったよさもあります」と琢磨選手は分析。

 そのうえで、「スカラシップを取れなければ、その先はないよ……というプレッシャーのなか、もがきながらでも成績が少しづつ出ていることも彼の成長に繋がっているんだと思います」と琢磨選手は語る。

 こうして経験を積み重ねた凛太郎選手は徐々にリザルトが上向きになっており、第9戦のSUGOでは今季のルーキー勢として最上位となる2位に入賞。さらに参加2年目となるホンダレーシングスクール鈴鹿も主席で修了し、2024年度のスカラシップを獲得、2025年はホンダのドライバー育成プログラム「ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクの一員としてレース活動を展開することになったのである。

 それだけに、最終戦となる鈴鹿では凛太郎選手の活躍が期待されていたのだが、8番手グリッドから迎えた第7戦は6位に終わったほか、7番手グリッドからスタートした第8戦も6位に終わるなど、残念ながらポディウムフィニッシュを果たせなかった。

「予選は路面温度が低くて思うような走りができませんでしたが、決勝ではセッティングを改善したことでスプーンが速くなっていて2台をオーバーテイクすることができました。第8戦は何回かチャンスはあったんですけど、抜けなかった。スクールでスカラシップを獲得できていることもあり、最終戦で勝ちたかったけれど、これからの課題として練習を重ねたいと思います」と悔しそうな表情を見せる凛太郎選手。

 その一方で、「2025年はまだどのカテゴリーに参戦するかは決まっていませんが、将来的には世界で活躍できるドライバーになりたいので、毎回、ベストを尽くしたいと思います」と語っているだけに、今後もインディ500ウイナーのDNAをもつ凛太郎選手に注目したいものだ。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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