この記事をまとめると
■アンダーステアが出ているときにタイヤを食わせようとする操作を「こじる」と呼ぶ
■「ソーイング」も「ステアリングをこじらせる」操作のひとつでNGテクニックだ
■スキール音が出ている状況でステアリングを切り足すのは愚の骨頂
ハンドルを「こじる」操作はヘタクソテクニック
この季節、風邪をこじらせるのも嫌だし、問題をこじらせるのもごめんだが、クルマ好きとしては、ステアリングをこじらせるのも勘弁願いたい。
「こじらせる」とは、「本来は簡単なことをわざと複雑にして、解決できなくしたり、その状態を長引かせたりすること」「物事をもつれさせ、処理を難しくする。めんどうにする」という意味で、元になる「こじる」とは「細長いものなどをあてがって、えぐるようにする」こと。
ドライビングにおける「ステアリングをこじらせる」というのは、アンダーステアが出はじめているのに、さらにハンドルを切り足して、もっとアンダーステアを酷くさせることをいう。
ゴムタイヤの特性上、ハンドルを切るとまずタイヤの中心線と、コーナリング中のクルマの進行方向に若干のずれが生じる。この角度のことをスリップアングルといい、あるところまでは角度(スリップアングル)がつけばつくほど、コーナリングフォースも増していく。しかし、タイヤのグリップの限界点に達すると、そこから先はスリップアングルが増えるにしたがって、コーナリングフォースはダウンしていく。
こうなると、タイヤはスキール音という悲鳴を上げ、トレッドの表面はささくれ(ささくれ摩耗=グレイニング)、角が削れて、偏摩耗しはじめるので、ドライバーがタイヤを「こじる」「こじらせる」という対応を取るというわけだ。
また、舵角が掴み切れなくてステアリングを左右に小刻みに動かす、いわゆる「ソーイング」も「ステアリングをこじらせる」例のひとつで、これは最悪のこじらせ方といっていい。
というのも、同じタイヤで同じ路面を同じ速度で走るとき、タイヤの理想的なスリップアングルは1ポイントで、ソーイングをするということは、その理想のスリップアングルを行きすぎたり戻ったりすることになり、一定に保つことができないことを意味するからだ。
コーナリングの理想のステアリングワークは、(単調なコーナーの場合)ステアリングを1回切って、1回戻すこと。
グリップに対するベストなスリップアングルまでステアアリングを切ったら、あとはアクセルコントロールだけで向きを変えるのが最良のドライビングだ。
いい換えれば、コーナリングをステアリングだけに頼ってはいけないということ。
アンダーステアが出るのは、ほとんどの場合、ステアリングの切りすぎか、オーバースピードが原因なので、スキール音が出ているのにステアリングを切り足す=ステアリングをこじるのは愚の骨頂。
速度が適正に下がるまで待つか、旋回制動中ならブレーキを緩めて、フロントタイヤを転がしてあげて、アンダーステアが消えるのを待つのが正解だ。