フランス車なんて不便……は昔の話! 国産車と遜色ない使い勝手
SUVブームなんて言葉が使われるようになってけっこうな時間が経つ。その間にSUVは多様化し、もうひとつのジャンルとして括るのもムリがあるんじゃないかというほど数多くのボディタイプが登場している。それを見ていると、これはもうブームなどではなく、ある意味クルマの行きつく形のひとつとして、この先も続いていくのではないかと思えるのだ。
そうしたSUVが溢れているなか、車種選びは困難を極める。クルマはとにかく多くの要素をもつ。クルマ購入に際してザックリ主要な要件として、値段、走り、使い勝手、そして見た目が挙げられる。もちろん売れているSUVが登場すれば、他メーカーもそこにライバルを投入するので、選び放題といえば選び放題、悩ましいといえば悩ましい……というワケだ。
そうしたなかで、ぜひ注目してほしいクルマがある。ルノーのSUV、アルカナだ。ひとことでいえば、日本の多くの人に「ちょうどいい」クルマなのだ。
まずは見た目。本当に月並みな言葉だけれど、オシャレ、である。フランス車だから、といってしまえばそれまでだが、十分な居住性を確保しつつもクーペライクなボディラインにシンプルだが個性を主張したフロントマスク。アルカナは2024年にマイナーチェンジで「esprit Alpine(エスプリ アルピーヌ)」という名称となり、それに伴ってルノーのエンブレムも新しい「ロサンジュ」になっていて、これもアルカナに華を添えている。F1でもお馴染みのアルピーヌブランドの「A」のエンブレムもまた、さりげなく所有欲を満たすポイントといえるだろう。
きっと自宅車庫にこのクルマが収まっていれば、クルマに詳しくないご近所さんが見ても、「わからないけど人とは違う雰囲気のいいクルマ」と認識してくれるハズだ。もっと雑にいえば、輸入車に対して「お金もちが乗るクルマ」なんて軽い偏見をもっている人でも、すんなり受け入れてくれるだろう、というような雰囲気である。もっともルノーとしては「わからないけど」ではダメで、誰がみてもフランスのルノーアルカナだ、となるぐらい売れたほうがいいと思うけれど……。ただ、そのちょっとしたレアさが、ルノー、そしてアルカナを人とはちょっと違うセンスのよさ、にしているとこうことも否めない。
ハッキリいってじつは昔のルノーは、乗り込めばひと目でマニアのクルマということがわかるようなインテリアだった。普通に国産車から乗り換えると、各部操作系が明らかに使いづらいし、メーターなどの表示も見づらかったのだ……それがまたファンを生んでいたのだが。
ところがいまのアルカナを含むルノー車はまったく問題なし。スイッチ類からドリンクホルダー、インフォテインメントまで、国産車オーナーでも何ら違和感なく使える。
じゃあ個性が消えた? といえばそうでもない。各部のデザインセンスは残ったまま、直感的な使いやすさが増したといえるだろう。コアなルノーの旧車マニアはわからないけれど、フランス人だってこのほうが使い勝手はいい、と想像はできる。
居住性やラゲッジは何ら問題なし。Cセグメントとして標準的な広さを兼ね備えていて、リヤシートにもエアコンの吹き出し口、そしてUSBポートを2つ装備するなど、装備面では不足がない。ラゲッジだって、今回試乗したE-TECH FULL HYBRIDで480リットル(MILD HYBRIDは513リットル)の容量があり、日本の基準でいえばゴルフバッグが2つ乗る。リヤシートを前に倒して、ラゲッジを広げられることはもはや当然!