インテリアにはキャンピングカーのものをそのまま流用
1983年に発注されたアストロバンは、アポロやサターン計画ではなく、スペースシャトル計画に沿ったもので、27フィート(8.23m)のキャンピングカー「エクセラ」をベースとして、3台が製造されています。
宇宙飛行士の送迎車といっても、特別な仕立て直しはそれほど多くありません。標準的なリビングエリアとダイニングエリアの代わりに、アストロバンは8人のシャトルクルーをサポートするために、両側にベンチシートを配置。このベンチには、宇宙飛行士のかさばるオレンジ色の打ち上げスーツに冷気を循環させるためのベンチレーターユニットなどが格納できるようになっていたそうです。
また、貨物の積み込みを可能にする大型の後部ハッチや、トイレや冷蔵庫などエアストリームの標準装備はそのまま流用。標準装備といえば、ダークウッドのパネルや金のカーテンなど、もとのインテリアがそのまま使われており、なんだかほのぼのムードを感じさせてくれますね。
1983年から2011年7月の最終ミッションまで27年間の運用で、アストロバンの走行距離はわずか2万6500マイル(約4万2000km)でした。これは、打ち上げのリハーサル中と打ち上げ当日に、乗組員がスーツを着た場所から発射台まで約9マイル移動して戻ってくるためにのみ使用されたため。なお、このうちエンジントラブルやパンクなどの故障は一切報告されていません。
現在はさすがにお役御免となって、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターなどに展示されているとのこと。磨き上げられたアルミボディに、ちょっと古めかしいNASAのロゴやフラッシュラインの映えることいったらありません。
じつはアストロバンはNASAが使っていただけでなく、ボーイング社のCST-100スターライナー乗組員向けに作られた「アストロバン II」も存在します。こちらは、エアストリーム・アトラス・ツーリング・コーチという現代的なモデルをベースに仕立てられたもの。
フロリダ州ケープカナベラルの宇宙飛行士が、スーツを着た場所から発射台までボーイングの宇宙飛行士を送り迎えするというのは初代と同じ役割です。
カタチこそ変わっても、アストロノーツ専用車というだけで胸が高まってくるではありませんか。