各期間の決算セールもいまでは旨味なし
事業年度末決算セールのように、新車がよく売れる「増販期」というのは年度末のほかに、「夏商戦(6・7月)」、事業年度締め半期決算セール(8月お盆休み明けから9月)、秋商戦(10・11月)、年末商戦(12月)などがある。
夏商戦と秋商戦はかつてボーナス商戦と呼ばれていたが、世のなかで非正規雇用など働き方の多様化もあり、労働者でボーナスをもらえる層が限定的となったこともあり表現として使うのを避け、今では増販期としての盛り上がりに欠けている。ちなみに年末商戦は、欧米ブランドメーカーの決算月が12月となっていることもあり、輸入車系がより熱心な販売促進活動を展開してくる傾向が高い。
現状では国内販売シェアトップのトヨタの新車需給状況がまだ不安定な部分もあり、販売現場では増販期を見据えての計画的な販売促進活動がなかなか思うようにできないことが、新車販売全体に大きな影響を与えている。
値引き条件や下取り査定額の動きも含め、トヨタ系ディーラー以外のメーカー系ディーラーでは、「トヨタさんはどうなんですか?」と、国内販売トップとなるトヨタの動きをある意味ベンチマークとして動いている。現状、トヨタ車は納期がなかなか読めない状況が続いているので、増販期に合わせた値引きアップなどの購入特典が用意されることはほぼないものと聞いている。こうなると、トヨタの動きに合わせるような動きを見せる他メーカー系ディーラーでも購入条件は伸び悩み傾向になりがちとなる。
トヨタ車の納期が不安定だからとして、トヨタ車を検討していたお客を値引き条件などで囲い込もうとすれば、トヨタ車より値引き額を多くして販売することにもなるので、結果的に再販価値の低下を招くことにも繋がる。残価設定ローンの利用の多い今どきの新車販売では、再販価値が低めというだけで敬遠するお客も少なくない。
そもそも日本でも人件費の上昇傾向が続くことになるだろうし、諸物価高騰は続いていくので、新車価格もそれを踏まえて値上げがいろいろな形で続くだろうが、値上げでコスト上昇分をすべて吸収できているわけでもないので、値引き余力の減少傾向も続くことになるだろう。
ホンダあたりは今でも、増販期になるとテレビコマーシャルを積極的にオンエアしたりしているので、それでも期待はできるが、現状では増販期にあえて新車購入のタイミングを合わせるメリットは少なく、その意味では「欲しくなったときが買い時」が令和の新車の買い方といっていいかもしれない。