鳥居ウイングはまさかのトランクを開けるため!? 常識外のロングノーズにセールスマンも唖然とした「ダッジ・チャージャー・デイトナ」という残念なクルマ (2/2ページ)

クライスラーといえば! のHEMIエンジン搭載仕様も

 クライスラーといえばヘミ(ヘミスフェリカル=半球形燃焼室)エンジンが有名です。実際、レース用マシンは426ci(7リッター)V8ヘミで、425馬力、663Nmを発生したとされています。で、このエンジンが市販車に搭載されていたかというと、オプション設定で一般ユーザーも手に入ったとのこと。ですが、503台が生産されたダッジ・デイトナ・チャージャーのうち、ヘミユニット車はわずかに70台。高価だったとはいえ、ホモロゲモデルのわりには人気薄な気がします。

 また、市販車は3速ATと4速MTが選べましたが、これまたほとんどのユーザーがATを選択しています。もっとも、トルクフライト727というアメ車でお馴染みのATユニットは4.10:1という加速重視なファイナルレシオだったので、十分にヘミの迫力を味わえたに違いありません。なお、426ヘミの4段MT仕様は0-100km/h加速5.7秒、最高速度250km/hがデフォルトで、レースチューンがなされると320km/hまで伸びたとのこと。

 ちなみに、ヘミでないエンジンは440ciのマグナムエンジンと呼ばれ、7.2リッターから最高出力375馬力、最大トルク66.3kgf-mというスペックですから、一般的には十分以上だったはず。

 大胆なカスタムや強力なエンジンのおかげで、ダッジ・デイトナ・チャージャーはレースでも好成績を残しました。ただ、クライスラーが悔しがったのはできたばかりのタラデガサーキットで優勝したにもかかわらず、フォードにタラデガ(トリノ・タラデガ)のネーミングをもっていかれたことかもしれません。

 結局、鳥居のついたチャージャーは1年だけの販売となり、1970年からはクライスラーのプリマス部門からロードランナーがスーパーバードの名前でもって鳥居ウイング、巨大ノーズコーンを受け継ぐことに。

 前年にダッジのセールスマンが苦労しているのを見て「ざまぁ」かなんか思っていたところ、とんだ災難が舞い込んだというわけ。ですが、スーパーバードはデイトナ・チャージャーの503台という売り上げに対し、1935台を売り切っており、セールスマンは胸をなでおろしたことでしょう。

 それでも、希少価値というアドバンテージなのか、現在ではデイトナ・チャージャーのほうが高値で取引されている模様です。とくに、22台しか作られなかったヘミの4速MTはお宝扱いなんですが、映画「ワイルドスピード」ではずいぶんラフに乗られてましたね。CGやレプリカかとも思いましたが、排気音はリアルなものだったのでご興味のある方はご覧になってはいかがでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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