安定を求めて入社してくるスタッフも増えた
新車での乗用車販売は堅調な伸びを見せていたが、1970年代にオイルショックが起こると風向きが大きく変わる。大手銀行を中心に新興ビジネスとされていた新車販売に対し、オイルショックで新車が売れなくなると、融資を断られる事態が多発したとも聞いている。
その当時、ようやく融資を快諾してくれた地元ではない地方銀行を、その恩に報いようと長い間メインバンクとしていたという話もあったようだ。1980年代後半に日本がバブル経済となり、まさに飛ぶように新車が売れるようになるまでは、新車販売ビジネスというのは、あくまで「新興ビジネスで要注意」という存在でもあった。
新興業種なので、じっくりと人材育成している間もないなか、セールスマンの増員が急務となった。当時は新車ではなくとも「飛び込み営業」が商品の売り方として比重の高かった時代。異業種での飛び込み販売経験のある有能なセールスマン確保のため、いまとは逆に歩合給の比率の高い給与体系とし、とにかく稼ぎたい腕利きの即戦力セールスマンが続々新車販売の世界にやってきた。
そういった風潮もあったので、ある意味「売れればいい」という状況も続き、セールスマンの悪さも目立つようになった。なので、セールスマンの信用低下もあり、注文書や領収書はカーボン複写式で専用書式となる。かなりの枚数で1セットというモノとなったので、結果的にいまどきのセールスマンの行動範囲をかなり限定的なものとしてしまった。
1980年代ぐらいまでは、「とにかく稼ぎたい」、「実績最優先なので男女での雇用格差が少ない」、「クルマが好き」といった理由で新車販売の世界に入ってくる若い世代も目立ってきた。その後、4年制大学の新卒学生採用を進めたのだが、ここ最近では「大メーカーの看板を背負っている」などといった背景を見て、地方の有力企業として安定性を求めて学卒入社してくる若い世代が目立ってきているとのこと。
より高い歩合給を求めるなどして、頻繁なセールスマンの出入りが起こっていたころに比べれば、新車販売の世界における雇用環境は安定したものとなっているものの、新車販売や点検・整備では十分な利益確保ができず、中古車販売に力を入れるところが増えているのが実情だ。そして、現場のメカニックは、非正規雇用も珍しくなくなってきている。
最近の販売現場では、「ファミリーレストランでもネコ型配膳ロボットが大活躍し、テーブルのタブレットで注文し、セルフレジで精算する時代です。中・長期的に見ればファミリーレストランのようなノリが新車販売でも定着し、セールスマンとの対面販売は限定的となり、セールスマンの多くは必要なくなるのでは?」といった漠然な不安を抱える声も聞くことがある。
とはいえ、当面は対面販売を主力とするスタイルは変わらないものといえるだろう。しかし、今後は働き手不足も手伝い、やむを得ない部分もあって「脱対面販売」という、いままでのスタイルを大きく変える、まさにイノベーションが起き、ベンチャーとして新たな売り方を我々に提案してくれることになるかもしれない。