横1列に3人座れるシートを設けるスポーツカーも存在
マクラーレンF1
3人乗りのスポーツカーといえば、マクラーレンF1がもっとも有名かもしれません。車名のとおりF1をイメージしたコクピット(アローヘッドなどと呼ばれたことも)ですから、ドライバーシートを中心にして、左右のシートはいくらか後ろに下がっているのが大きな特徴。すると、「センターシートはどちら側からでも乗り降りしづらいのでは?」よく聞かれるのですが、筆者の経験では大面積のディヘドラルドアのおかげでさほど苦労は感じませんでした。
なにしろ設計者のゴードン・マーレー(デザインはピーター・スティーブンス)は、マクラーレンF1は「普段使い」を強く意識した(!)とのことで、乗降性だけでなく左右スカットルにコンパートメントを設けるなど使い勝手も超一流といわざるを得ません。
とはいえ、後ろにオフセットされた助手席との会話にはいちいち振り向かなければならず、安全性の面からは「デートカーには不向き」とされてしまいそう(笑)。
なお、ゴードン・マーレーは自身の自動車ブランドGMA(ゴードン・マーレー・オートモーティブ)からもT50というF1そっくりさん的なモデルをリリースしており、案の定アローヘッドの3人乗り(笑)。よほど普段使いにこだわりがあるのかもしれません。
マトラ・シムカ・バゲーラ/タルボ・マトラ・ムレーナ
スーパーカー世代なら3人乗りといえばマトラやタルボの方が馴染み深いかと。なんといっても横1列3人のシートアレンジ、ミッドシップ、そしてフランス製というクセ強モデルですから、クルマ好きの記憶にも色濃く残っているはずです。
マトラ/シムカ/タルボの複雑な来歴は割愛しますが、バゲーラもムレーナもそもそもはフィアットX1/9というこれまた往年の傑作ミッドシップスポーツカーにインスパイアされたモデルで、ここにフランスの自動車エンジニアリングをふんだんに注いだ意欲作。
横に3席が並びつつ、独立したドライバーシートは常識的に左端(あるいは右端)に設定されており、ベンチシートの3人がけとはニュアンスが異なります。また、ハッチバックスタイルを活かし、ミッドシップながらラゲッジスペースが確保されているところはケチといわれるフランス人らしい設計といえるでしょう。
とはいえ、横並びシートのおかげで全幅1735mmと当時としては幅が広くなり、1442ccの排気量ながら国内では3ナンバーとなってしまうため、販売はわりと苦労した様子。ちなみに、バゲーラは4万7802台(1973-1980)、その後継モデルとなったムレーナは1万680台(1980-1983)とX1/9には遠く(約140万台)及ばないものの、個性派モデルとしては大いに健闘したといえるのではないでしょうか。