ハイブリッドカー界隈で密かに流行る「グリル塞ぎ」って何の意味がある? メーカーも純正採用する機能だけどセルフでやるのは「禁じ手」? (2/2ページ)

オーバークール対策はレースでも使われる

 グリル塞ぎ的なテクニック、カスタマイズはいまに始まったものではありません。

 かつて微妙な水温管理が難しかった時代のバイクなどではラジエターの一部にガムテープを貼って、オーバークールを防ぐという手法もありましたし、それはレーシングカーでも見かけるものでした。

 市販車においても、あのAE86カローラレビンには「エアロダイナミックグリル」という手動により開閉できるグリルが備わっていました。グリルを塞いで、本来の性能を引き出すというアプローチは、かなり昔からあったのです。

 ところで、冒頭で紹介した30系プリウスのグリル塞ぎでは、マニアがDIYで取り付けているようですが、そこにはふたつの注意点があります。

 AE86の手動可変グリルには『エアロ』という言葉が使われていますが、グリル塞ぎに空気抵抗の軽減といった空力的効果を期待すべきではないということです。

 グリル開口だけに絞って空気の流れを見れば、塞いだほうが抵抗は少なくなるように思えますが、風洞実験などをしたケースを除けば、グリル塞ぎによって乱流が発生するのは確実です。その乱流がどのような悪さをするのかはわかりませんし、基本的に計算外の乱流が生まれて空気抵抗が改善するというのは考えづらいといえます。

 それ以上に『グリル塞ぎ』で気を付けたいのは強度です。

 停止した状態では十分な取り付け強度があって、グリルを塞ぐ部材自体も頑丈なものに見えても、クルマが100km/hで走ったときにかかる圧力(空気抵抗)はハンパではありません。走行時に窓から手を出すと想像以上の空気抵抗を感じるでしょう。速度の二乗で空気抵抗は増えていきますから、高速走行で外れない・破壊されないくらいの強度でグリルを塞ぐ必要があります。

 また、自動車メーカーが開発したグリルシャッターであれば、エンジンの温度に合わせて開閉しますから、オーバークールはもちろん、オーバーヒートも防げますが、単純なグリル塞ぎではオーバーヒートのリスクを負うことになります。

「グリル塞ぎ」というのは、そうしたリスクを承知のうえで、自己責任で実施することになるマニアックな改造といえます。筆者としてはオススメしませんし、どうしても冬季のオーバークールが気になって仕方がないというのであれば、グリルシャッターを装備したモデル(国産ではトヨタやスバルに多い)に乗り換えることをお勧めします。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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