時代を彩ってきたスペチアーレとその上をゆく「イコナ」「ワンオフ」
1995年に発表された、F40に続くスペチアーレ「F50」は349台の限定車であり、これは望まれる数よりも1台少なくというエンツォの意思を受け継いだ数字だった。最後の1台を創立50周年の1997年に完成させるというスケジュールで生産が行われたF50は、現在でもなおもっともスパルタンなスペチアーレとして人気が高い。
2002年登場の「エンツォ・フェラーリ」、そして2013年にハイブリッドシステムを搭載して誕生した「ラ・フェラーリ」は、それぞれ399台、499台の限定車。のちに前者にはスマトラ島沖地震の義捐金を集めることを目的に、もう1台のモデルがローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって注文されているが、これはもちろん特別な例である。
ちなみにラ・フェラーリの購入を望んだカスタマーは、限定数の499台(こちらも後にイタリア中部地震のチャリティのために500台目が生産されている)の2倍以上の数字に達したという。さらに、ラ・フェラーリにはオープン仕様の「ラ・フェラーリ アペルタ」も209台の限定で追加設定。こちらもチャリティのため210台目が生産されている。
ほかにも599台限定で生産された599XXのロードバージョン、「599GTO」。F12ベルリネッタの高性能版たる799台の「F12tdf」。812スーパーファストに専用チューニングのエンジンを搭載するなど、さらにパフォーマンスを高め、各々999台、549台が生産された「812コンペティツィオーネ」「同A」。
最新のスペチアーレとして位置づけられる799台の「F80」(こちらも最後の1台が創立80周年の2027年に完成される予定だ)。そして、よりサーキット走行にフォーカスした「SF90XXストラダーレ」と「同スパイダー」が、それぞれ799台、599台の限定で生産される計画となっている。
フェラーリには、さらによりエグゼクティブなフューオフプログラムの「イコナ」や、究極のパーソナリゼーションプログラムともいえる「ワンオフ」も存在するから、これらの特別なフェラーリを手に入れることができるようになるまでの時間、そしてそれに対応するまでの資金は限りなく長く、そして大きいのだ。
不特定多数のカスタマーに新たなプロダクトの存在を訴えかけなくとも、フェラーリに選択された優良なカスタマーは、代わりにその役を担ってくれるだろう。もちろんその前提には、フェラーリのプロダクトはライバルと比較して魅力的な存在でなければならないという条件があるのだが。
ここ数年の販売実績を見るかぎり、フェラーリは十分にその条件をクリアしているようである。