この記事をまとめると
■雪道でEVが立ち往生すると危険だと考える人が多い
■満充電のリーフであれば外部電源による暖房機器の使用でも1日くらいは電欠になることはない
■EV・ガソリン車にかかわらず大雪のなかに出かけるのは控えることが肝要だ
大雪のなかにEVで立ち往生したらガソリン車よりも危ないのか?
冬の訪れを聞くと、必ずといっていいほど目にするのが、EVの話題だ。雪道でEVで立ち往生したら危ないじゃないかという、例のフレーズである。
僕が知る限り、EVで立ち往生に巻き込まれて命を落としたというニュースは見たことがない。でもそれはEVの絶対数が少ないからだと反論する人もいそうなので、JAFのテストの結果を紹介しておこう。
外気温-8.1℃という極寒のなか、4台の日産リーフを用意し、1名が乗車。①オートエアコン25℃ ②電気毛布のみ ③シートヒーターHi+電気フットヒーター ④毛布+寒く感じたときにエアコンONと設定を変え、19:00~0:00の5時間を車内で過ごしたというものだ。
※画像はJAFのYouTubeチャンネルより
4台ともに5時間は余裕で過ごせたのでテストを延長すると、①はバッテリー残量が10%となったため4:30頃にテスト終了。②~④はAM8:00まで電力を保ったが、④はオートエアコンに切り替えたことも影響し25%まで低下。一方②と③では50%以上残った。
つまりエアコンのみだと9時間半、毛布を併用すれば半日、消費電力の少ない外部電源を活用した暖房機器を使うと1日は過ごせるということになる。
※画像はJAFのYouTubeチャンネルより
「でも燃料がある限り暖かいエンジン車のほうが上だね」と思った人がいるかもしれないが、そうともいえない。
同じJAFではエンジン車でも同様の極寒テストを実施しているのだが、こちらではマフラーが埋まっているので車内に一酸化炭素が充満し、たった22分で測定上限値に達したという。この状態で3時間いると命を落としてしまうそうだ。
つまり何もしないで雪のなかに埋もれていたら、むしろエンジン車のほうが危険ということになる。たしかにエンジン車では、車内でひと晩過ごした人が遺体で見つかったというニュースを何度か目にしている。
こうした情報を調べながら、クルマ業界にはほかにも似たような話があることを思い出した。ライドシェアだ。
日本でライドシェアの議論が盛んになった頃から、タクシー会社の団体は「危険な白タク」といいうフレーズを使って、導入に反対していた。仕事を奪われる立場なので理解できなくもないが、国土交通省の資料で走行距離あたりの事故率を見ると、タクシーのほうが自家用車より約3倍も高いという数字があるのだ。
なのに一般ドライバーが運転をするライドシェアのほうが危ないと叫び続け、国が法改正を進めようとすると反対の声を上げ、結果的にスケジュールが先延ばしになったということもあった。
ふたつの事例に共通しているのは、防衛本能だと思っている。自分たちの地位が脅かされようとしているときに、衝撃的なフレーズを使って相手の欠点をアピールし、優位性を保とうという気持ちがあるのだろう。最近は選挙でもこういう動きが見られるけれど、実際にどうなのかは、JAFや国土交通省が示しているとおりだ。
それ以前に個人的に不思議なのは、地震と違ってある程度予測ができるのに、自分は大丈夫と思って出かけていって、立ち往生に巻き込まれる人が多いことだ。
電欠の心配をする前に、正常性バイアスといわれるその意識を見直す人が増えれば、立ち往生による被害は減っていくのではないだろうか。
ちなみに北海道にもリーフのオーナーはいて、2018年の北海道胆振東部地震で全道がブラックアウトしたときは、V2Hで苦もなく生活を続けられたという。マイカーは9割もの時間を車庫で過ごしているそうなので、こっちのほうが大事に思える。