新しいエコカーに乗り換えれば「補助金」&「免税」! 中国が「新車販売が好調」と伝える裏にある「スクラップインセンティブ」とは (2/2ページ)

中国政府は補助金制度による新能源車への切り替えを期待する

 現状をみると、中国経済への「カツ入れ」のように見えがちなのだが、中国全土で見ればいまだに大気汚染も深刻な状況となっている。政府としては「一挙両得」というわけではないが、これを機に一気に可能な限り新能源車への切り替えを進めようとしているのかもしれない。

 アメリカでは2009年にスクラップインセンティブを行っている。南カリフォルニアで当時の話を聞いたところでは、締め切り日は多くのディーラーにて補助金目当てで新車に乗り換えようとする人が大挙して押しかけたそうだ。

 現金一括払いは資金洗浄の恐れもあり、当時から原則受け付けていなかった。その一方で、ローン審査には結構時間を要すこととなり、その日は多くのディーラーで店を閉めずに終夜営業を行ったのである。「なかなか商談もできないお客さままで出てきて、ピザなどの食事を用意してもてなすディーラーも出てきました」(当時を知る業界通)。

 このときはリーマンショック直後でもあり、経済対策的色合いも強かったが、アメリカ政府としてはここで一気に大排気量で排ガス基準の緩いころの古い車両に乗っている人の一掃を行うという意味でも補助金制度を推し進めたとされている。「最後まで古いクルマに乗っていたお隣さんが、このとき最新の日本車に乗り換えた」とは当時に聞いた話。

 中国車といえば、最新のBEVが世界的にも注目されているが、中国国内では主要都市であっても、まだまだ年式の古いクルマがたくさん街なかを走っている。補助金対象車を見ても、ガソリン車で2011年6月30日以前の登録車、ディーゼル車で2013年6月30日以前の登録車なので、ガソリン車で13年落ち、ディーゼル車で10年落ち以上の低年式車が対象なことからも、政府も街なかで低年式車が目立っていることは承知していたようである。

 新能源車への乗り換えのほうが補助金は手厚いことからも、政府としてもこれでさらにBEV普及率も上げたいと思っているのは否定することはできないだろう。

 不思議なのは、自国メーカーが数多くあるし、中国という特殊な政治体制を考えれば、補助金交付を「中国メーカー車」に限定してもおかしくないように思えるのだが、そこは中国車が海外ブランド車かという単純な縛りを設けないところは意外だと思っている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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