この記事をまとめると
■6輪といえばタイレルのF1が有名だが市販車にも6輪車があった
■1970年代にイタリアのコヴィーニが開発するも一度はお蔵入り
■2003年にプロジェクトが再開されて生産モデルを限定生産した
伝説のレーシングカー「タイレルP34」に憧れて
タイレルの6輪F1マシン、P34はとてつもない影響力を持っていたのだといまさらになって思い知らされました。1976年の登場以来、プラモデルやRCカーで前4輪、後ろ2輪のカッコいいメカを堪能したのは決して筆者だけではないでしょう。
それどころか、なんとイタリアのフェルッチオ・コヴィーニは、P34から受けた影響から、6輪スーパーカーまで作りあげてしまいました。やはり、クルマ好きにとって6輪車はいつまでたってもロマンあふれる存在に違いありません。
タイレルP34(いまではティレルが一般的な呼び方ですが、当時風に表記しました)はF1シーンにはもちろん、クルマ業界にも激震を走らせたことご承知のとおり。さまざまなファクトリーがP34に着想を得て、6輪のロードカーに挑んだものの、成功したものはごく少数にとどまります。コヴィーニにしても同様で、6輪車を作ろうとファクトリーを立ち上げたはいいものの、設計・試作には4年もの歳月を要したとされています。
この6輪車はC6Wと名付けられ、1980年には発売する予定だったのですが、タイレルP34と似たような理由でお蔵入りとなってしまいました。それはFIAとかイタリアの車検制度とかではなく、ずばりタイヤの入手が難しかったということ。小径で扁平率の低いタイヤ、しかも高性能なスポーツカー向けとなると、当時はまだ選択肢が限られてしまったというわけ(ちなみにP34もグッドイヤーからの供給に限界があったとされています)。
で、仕方がないからコヴィーニは一般的な4輪のスポーツカー作りに励むことになり、B24やT40といった個性的なマシンをいくつかリリースしています。これらはこれらで魅力的ではありますが、やっぱりコヴィーニ本人はあきらめきれず、ついには2003年にプロジェクトを再始動!
現在の形に近いプロトタイプが2004年に完成すると、翌年にはトリノショーに出品。6輪車で胸アツになった多数のビリオネアから注文が舞い込み、年間6〜8台の限定生産が開始されたのです。
生産モデルはアウディの4.2リッターV8エンジンを搭載し、フロントタイヤも205/45R15とコンベンショナルなサイズとなり、グッドウッドでの走りを見てもじつにスムースなコーナリングを披露しています。
ちなみに、コヴィーニ氏によれば、6輪車のメリットは何をおいても「カッケー!」が最初にあり、次いでフロントタイヤのパンクのリスクが減る、ハイドロプレーニングのリスクが減る、ブレーキとグリップも改善、そして、より快適な乗り心地を実現しているとのこと。
なお、正面の衝撃吸収性も改善しているとのことですが、タイヤ&ホイールはクラッシャブルなものではないため、この辺はイタリア人らしいリップサービスではないかと。
それにしても、タイレルP34を目にしてから30年近くを経ても冷めなかった6輪車への情熱は素晴らしい。そんなC6Wを見ていると、しばらくぶりにタイレルのプラモやRCカーをいじくりたくなってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。