もはや本革シートは過去のもの!? いまクルマのシートは「環境性」「持続性」を考えた素材に置きかわっていた (2/2ページ)

環境負荷の少ない新素材の登場に期待

 そもそも、クルマのシートはさまざまな役目がある。一般論としていえば、ドライバーがクルマを運転する際にハンドルや各種ペダルを的確に操作するために、ドライバーの身体をしっかりとホールドする必要がある。

 こうした点を重視しているのが、いわゆるバケットシートと呼ばれる競技車両を原点としたシートだ。バケットシートに限らず、クルマのシートは身体をしっかりホールドすることが大事だ。

 さらに、シート内部にコイルバネが装着されているのだから、シートは乗り心地(座り心地)としてサスペンションの役割もある。

 シートに関連した操作性と乗り心地(座り心地)とのバランスは、シートを装着するクルマの商品コンセプトや運動特性によって違いが出る。

 そうしたなか、日系メーカーが実施する最近の新車発表会や報道陣向け試乗会では、シートに焦点をあてた話題が増えている印象もある。商品としてのクルマの熟成度が上がるほど、ヒトとクルマの物理的な接点であるシートの重要性が高まるのだ。

 もうひとつは、クルマに対する趣向性がシートに与える影響が大きい。時代を振り返れば、1940年代から50年代、そして60年代と時代が進むにつれて、それまで一部の富裕層や官公庁向けだったクルマが庶民向け商品へと、その役割が拡大していった。それに合わせて、クルマには高級車、ファミリーカー、スポーツカーなど多様な種類が登場したわけだが、「シート=車内空間」という観点で「シート=家具」という考え方も出てきたものと思われる。

 自宅でくつろぐようなクルマのシート、または自宅では味わえないような高級な雰囲気の車内空間に似合うシート、という発想だ。そこでクルマのシートでも本革という仕様が広がった。または、馬具もクルマのシートに対する影響があったのではないだろう。

 いずれにしても、環境対応やサステナビリティの観点を考慮した各種の新素材を応用したクルマのシート表皮が今後、登場することになるだろう。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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