「デザインを頑張る」宣言のVW! デザインのプロが新型ティグアンがどう進化したのかじっくり観察してみた

この記事をまとめると

■11月19日にティグアンの新型が販売スタートとなった

■2023年9月に発表したデザイン重視戦略で語った要素が織り込まれている

■直線基調のフォルムから曲線や抑揚を使ったエモーショナルな表現へと変化している

新型ティグアンのデザインに迫る

 フォルクスワーゲンジャパンは11月19日、新型ティグアンの販売を開始しました。同車はフォルクスワーゲングループのなかでも高い評価を得るベストセラーとなっていますが、その魅力はどこにあるのか? ここでは、エクステリアデザインの視点から新型の進化に迫ってみたいと思います。

●デザイン重視を掲げたフォルクスワーゲングループ

 新型ティグアンのスタイリングをチェックするに当たっては、2023年9月にフォルクスワーゲングループが発表したデザイン重視戦略に触れておこうと思います。「デザインによる成功」をテーマにした発表では、今後登場する製品はより個性的で明快なデザイン原理を持たせるとし、同グループは「design-driven company」を目指すといった内容でした。

 個人的には、従前の同社が特段デザインを疎かにしていたとは思いませんが、とにかくもっと頑張ると……。まあ、この発表はわずか1年前の話なので、3代目のティグアンがその「戦略」を100%反映させているとはいい切れませんが、一定の影響はあると思えるワケです。

 たとえば、自慢のMQBプラットフォームの進化版であるMQB evoを採用した3代目は、先代より30mm長く20mm低いボディとなりました。SUVらしさは若干高くなったボンネットが担保していますが、よりワゴン的なプロポーションによって「スタイリッシュさ」を狙ったように見えます。

 フロントを見ても同様の傾向があって、先代の3本のラインをもった端正なグリルはギュっと細く引き延ばされてゴルフ風に。また、ロアグリルは全体がブラックアウトされ、ガバッと大きな口を開けたようで、これは少し前のトヨタ車に見られた「キーンルック」に近いなかなか派手な表現です。

●このままエモーショナル路線を邁進する?

 サイドビューにも大きな変化があります。ポロに似た先代の深く明快な2重のキャラクターラインは消え、前後フェンダーにブリスター風のラインが引かれました。これにより、ドア面の大きな抑揚がクローズアップされ、側面全体が情緒的に見えるのです。

 次にリヤを見ると、先代では左右で独立していたテールランプが流行の横一文字タイプになったのが大きな特徴。先のとおりフロントやサイド面がエモーショナルな表現に変化するなか、このランプは比較的端正で、ボディ全体が暴れないようリヤエンドで引き締め役になっていると思えます。

 さて、こうして3代目ティグアンのエクステリアデザインを俯瞰すると、フォルクスワーゲンブランドの「新しいデザイン言語」が見えてきます。つまり、しばらく続いた直線基調の端正なフォルムから、曲線や抑揚を使ったエモーショナルな表現への移行です。

「デザインで頑張る!」という戦略を考えれば、こうした勢いを感じさせる変化が出て来るのはナンとなく理解できます。ただ、グループのなかでもよりベーシックな立ち位置となるブランドですから、落ち着きとエモーショナルのバランスをどう取るのかが課題になると思われます。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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