フェラーリ乗りが待ち望んだ究極の488! 296 GT3が出ても色褪せない「488 GT3 EVO 2020」とは (2/2ページ)

488シリーズで培ってきた経験の集大成

 今回紹介するモデルは、488 GT3にとっては2度目の正常進化型となるもので、フェラーリでは前作と識別するために「488 GT3 Evo 2020」と呼称している。それはフェラーリのレース史上、もっとも成功した一台のパフォーマンスをさらに高めたいという願いの結晶。

 それを完成させるための大きな力となったのは、実際にサーキットに488 GT3を投じてきたチームからのフィードバックがあったことは当然のこと。エアロダイナミクス、ビークルダイナミクス、人間工学、安全性、信頼性の向上は、488 GT3 Evo 2020の開発におけるおもな焦点であり、もちろんすべてFIAによる性能制限をクリアする。

 488 GT3 Evo 2020でまず大きく変化したのはホイールベースの数字だ。それは488 GTEと共通の値にまで延長され、結果としてタイヤの使用を最適化し、摩耗を低減。エンジニアはさらに、車両重量の低減にも積極的に取り組み、重心を低下させるとともに、性能調整による最低重量をクリアするためにより多くのバラストを搭載できるようになった。

 ミッドに搭載される90度V型8気筒ツインターボエンジンは、それまでのモデルから基本的なスペックに変化はないが、新しいECUを採用したことで、よりスムースで正確なトルク伝達が可能とされることになった。

 車両制御システムも改善され、ABSやトラクションコントロールの作動フィーリングも、それまで以上に自然なものになったという。

 キャビンに目を向けると、サベルト社と共同開発された新デザインの高剛性シートが装備されていることがわかる。これはもちろんFIAによる安全基準を満たしたもので、一方でその重量は従来までのものと比較して2.4kgも軽い。シートベルトには新しいストラップとバックルも追加された。

 488 GT3 Evo 2020は、フェラーリの期待どおり世界中のサーキットで魅力的なリザルトを残してくれた。現在、フェラーリのGT3レースでの主役は、ミケロット・アウトモビリに代わってオレカが開発と製作、そしてアフターサービスに協力する2023年登場の296 GT3へと変わっているが、488GT3の存在はこれからもファンの間から忘れ去られることはないだろう。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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