電気を通すことも装着される理由のひとつ
トラックとはハードワークに従事する仕事車であるため、仕事で走る距離も半端ではない。そのため、素材には軽さよりも強さを求めたのだろう。そして、光りものを好むデコトラの世界だからこそ、周囲の景色が映り込むような鉄メッキやステンレスに白羽の矢が立ったのである。
ちなみに、1990年代にFRPで製作された飾りがデコトラの世界に登場したことがある。その軽さや自由なデザイン性は話題となったのだが、浸透することはなく消えていった。やはり、デコトラ愛好家たちは輝きを選んだのである。
現代では諸外国のトラックを参考にした、欧米風やユーロ風のトラックも見受けられるが、それらは当然のごとくデコトラではない。デコトラが日本発祥の文化であることは周知の事実であるが、欧米風やユーロ風はネーミングどおり外国のカスタムを参考にしたものだからだ。
それでも、トラックの世界ではデコトラ人気のほうが圧倒的に高い。そのことからも、デコトラは日本人の心を強く刺激する存在であることが伝わってくる。
また、FRPとは異なり、鉄やステンレスは電気を通す素材であるのも重要な要素。デコトラには電飾による飾り付けも必須だが、光らせるためにはプラスとマイナスの電源が必要となる。クルマの車体にはマイナス電源のボディアースが流れているため、車体の鉄板部分に固定された鉄やステンレスのパーツにも、マイナスの電気が自ずと流れる。
そのため、プラスの配線をするだけで光らせることができるのだ。もちろんマッドガードや車内で使用されているような樹脂製のパーツは電気を流さないため、マイナスの配線もしなければならない。FRPも同様に、余分な作業を要してしまうのである。それもまた、受け入れられにくい要因のひとつであるのだろう。
そもそもデコトラの飾りはメッキをかけた鉄やステンレスで製作されたところから始まった。現代を生きるデコトラ愛好家たちはそんな当時のスタイルを尊重しているからこそ、新たなスタイルを見出すことをしないのだろう。むしろ、そのような行為は先人たちを冒涜するものだと捉えているに違いない。自分が刺激されたスタイルを崩さずに受け継いでゆくという気概もまた、日本人らしい奥ゆかしき部分が表れているといえるのではないだろうか。