安全確保やドライバーの意識向上に寄与
それは無人のトラックが動かないようにするという物理的な理由があるのはもちろんだが、ドライバーの意識向上のために徹底している会社も多い。安全管理を徹底させるという狙いも込めているのである。
そんな輪止めであるが、ときとして危険な凶器へと姿を変えることもある。それは荷役作業などを終えたドライバーが、輪止めを外すことなく乗車してしまうという場合だ。輪止めとはいえ、もちろん完璧なものではない。そもそも自然にかかるわずかな力で車体が動き出さないようにするものであるため、アクセルを踏み込むなどの激しい負荷に耐えられるようなシロモノではないからだ。
輪止めというものは、宅配ドライバーであれば運転席側のフロントタイヤに噛ませる傾向にある。それはもちろん、ドライバーの利便性を考慮したものだ。基本的にふたつでワンセットとなっているため、タイヤの前後に噛ますのだ。
そんな輪止めを噛ませたままでトラックを発進させたら、どうなるか。
輪止めにはそのような大きな力に耐えられるような構造ではないため、最悪の場合は勢いよく弾き飛んでしまうのだ。そんな凡ミスを防ぐために運転席側のフロントタイヤに輪止めを噛ませ、かつ弾け飛ばないようにふたつの輪止めを紐で結び、その紐をドアハンドルなどと結ぶドライバーが多いのだ。そうすることで、悲惨な事故を未然に防ぐように努めているのである。
どのような仕事でもいえることであるが、慣れから生じるヒューマンエラーは大きな被害を引き起こしてしまいがち。熟練だから手を抜きたくなる気もちもわからないでもないが、ほんの些細な気の緩みが取り返しのつかない事態を招いてしまうことにもなりかねない。キャリアはもちろん重要だが、そのような万が一に対する対策ができてこそ、真のプロだといえるだろう。