歴代屈指の均整のとれたデザイン
●高級感とスポーティさを高次元で融合
一方、「書の勢い」をテーマにしたサイドビューは、フェンダーから始まる強い張りのショルダーラインが、これまた高い安定感と力強さを表現。リヤビューは、サイドにまわり込んだ台形のテールランプが抑制の利いた動感を表現しています。
また、当時はトヨタのインテリアデザインが絶好調の時期で、作り込みのよさと巧みな色使いにより、豪華さと先進感がじつに巧く融合した内装になっています。この時期は、ニュー・センチュリー・バリューを謳ったカローラなども同様に秀逸でした。
そして、こうしたスポーティさや力強さを織り込んだボディが、極めてシンプルにまとまっていることがキモです。プレスドアなどは使っていませんが、非常に高いカタマリ感もあって、360度どこから見ても破綻がありません。
これは、さらなるスポーティ路線を狙い「CROWN Re BORN」を掲げた14代目が、派手なグリルやキャラクターライン、ピンク色の設定など、基本を疎かにしてしまったこととじつに対照的であり、カーデザインの奥深さを物語っているところです。
●記念碑的なふたつのモデル
さて、今回はベストデザインとはしませんでしたが、クラウンのデザインを語るとき、1983年発売の7代目にも触れておいたほうがいいかもしれません。バブル景気前夜、流行の4ドアハードトップを採用した煌びやかなボディは、特徴的なクリスタル・ピラーも相まって、時代を象徴するスタイリングを提示しました。
まあ、いってみれば「売れるデザイン」ですが、それはそれで評価するべきでしょう。なにより、「いつかはクラウン」でヒットした同車ですが、そのゴールをひっくり返したのが今回の12代目だったという点が、皮肉というかじつに面白いところなのです。