この記事をまとめると
■トンネル内にある白い壁は視界確保と耐久性の向上が主な理由だ
■白いタイルなどを貼ることにより汚れの付着を抑制できる効果もある
■明るくする方向にある理由はクルマの高性能化が背景にある
トンネルの壁が白っぽい理由
新しいトンネルでは、トンネル内が白っぽく見える。照明が白いLEDであるだけでなく、壁面が白かったり路面も白かったりする例がある。理由は、視界の確保のほかに、耐久性の向上がある。
これまで、トンネル内はオレンジ色のナトリウム灯が使われる例が多かった。それは昔のフランス車が黄色のヘッドライトを使ったように、陰影がはっきりし、モノの存在を認識しやすかったからだ。フォグランプが黄色の時代もあった。
一方、黄色の灯火は暗い印象があり、瞳の色の薄い白人には不都合がなかったかもしれないが、瞳の色が暗い日本人などには見にくさ、見分けにくさを感じさせる特性を持つ。
その後、白色LEDができたことにより、より明るく、また鮮明にモノを見られるようになり、かつ耐久性に優れるので、保守管理や交換の手間を減らすことができ、LED照明による明るいトンネルが生まれた。
あわせてトンネルに入ると、壁面の下半分が白いタイルなどで覆われているのを見る。かつては、コンクリートのままの壁面であったり、樹脂で作られた覆いが用いられたりしている様子も見られた。白いタイルを用いるのは、LEDの照明と同じようにより明るい視界を確保できることに加え、水で汚れが流れやすく、薄汚れて暗くなりにくいためだ。
ほかに、路面をコンクリートで舗装することにより、アスファルト舗装に比べ白っぽく見え、かつ明るく感じるトンネルもあるようだ。コンクリートの利点も、アスファルトに比べ傷みにくく、保守管理が容易になる。保守管理の容易さは重要で、頻繁に点検や保守の工事が行われると、渋滞の原因になりやすい。
トンネル内の明るさが求められる背景にあるのは、クルマの高性能化があるだろう。軽自動車でも、時速100kmで走ることが苦しくない時代になっている。最高時速を100kmまでとする自粛性もなくなった。もちろん、速度制限を超えて走ることは違反になるが、速度制限内でも時速120kmで走れる高速道路が出現している。
時速120kmで走っているとき、0.1秒での移動距離は3.3mだ。時速40kmなら、1.1mである。照明が暗いことによる見落としの懸念は、クルマの性能向上とともに高まっているといえる。
別の視点では、高齢者による交通事故が話題にのぼるが、年齢を重ねるほど、明るい所から暗い所へ移動した際の視力の復帰に時間を要する。10~20代の若者であれば何秒かで視力を回復するところ、高齢者になると1分ほどしてもまだ視力が定かでないこともある。極端にいえば、その間は目をつぶって運転しているに等しいといえなくもない。
トンネル内を白く明るくして視界を確保する取り組みは、安全性の向上と、保守管理の容易さを兼ね備えた対応だ。