紙カタログはなくなっても紙の注文書はまだまだ残る
我が家で新車を買うときには、父親がもらってきたカタログの装備一覧表で自分のほしい装備のところにマーカーを引き、どのグレードを購入するか楽しそうにカタログを読み込んでいた。アメリカなどの諸外国では、すでにデジタルカタログに完全移行している地域も多い。そして日本でも「新車の紙カタログ」というものが、少なくとも量販車種では「歴史のひとコマ」になろうとしている。
また今回、紙カタログの廃止とともに、紙の注文書も廃止になったとのこと。「すでにトヨタでは、電子署名が導入されており『注文書にハンコ押すからあと3万円値引きして』といった値引き交渉は成立しませんでした。ただ、端末入力で作成した注文書に電子署名した注文書はプリントアウトしてお客に渡されていましたが、今後はプリントアウトした紙ベースの注文書も存在しなくなるようです」(事情通)。
トヨタ車を購入する場合には「トヨタアカウント」をすでに取得するようになっており、これからは取得したアカウントでログインして、自宅などのパソコン上で注文書を閲覧することが可能になるとのことであった。なお、注文書の書式はいままでどおり業界団体のフォーマットに沿ったものなので、書式自体は大きく変わることはないそうである。
セールスマンなど販売する側も紙ベースでの受注管理ができず、端末の画面上で管理していくことになるとのことである。それなら新車購入時は完全ペーパーレスになるのではないかとも考えるのだが、新車の新規登録や下取り車の名義変更手続きなどをディーラーに代行してもらう委任状は紙ベースであり、そこには実印を押印する必要があるので、紙ベースの印鑑証明、さらには車庫証明も紙でのやりとりが残るということである。
現状では紙のカタログを残しているトヨタ以外のメーカーのカタログも、ページ数の少ない薄いものとなっており、これをもらっても購買意欲が高まるとは思えないものが目立っている。トヨタ以外でも紙のカタログ全廃は時間の問題といっていいだろう。
一方で、新車購入の実務面、運輸支局への新規登録手続きはオンラインを活用したワンストップサービスとなっている。しかし、それに必要な書類の一部は紙ベースのものが必要であり、それをスキャンしてデータ化している。最後まで電子化をてこずらせるのは押印が必要な書類となるだろう。印鑑証明そのものの電子データ化は可能でも、新車購入よりもはるかに多額な取り引きでも実印が重要視されているものでもあり、軽々に実印の電子データ化はできないだろう。
新車販売の世界の完全ペーパーレス化にはまだまだ時間を要することになりそうだ。