人生最後にお世話になる「霊柩車」! ド派手な宮型が減少して洋型に軽バンにミニバンにマイクロバスまで多様化していた (2/2ページ)

軽バンタイプなども増えている

 霊柩車を製造、販売している事業者は、先述のとおりベース車両を改造して完成車にする。いわば、架装事業者でもあるわけだ。動力部分や運転操作部分(運転席)はそのままにし、屋根からトランク部分を分解して寝台部分の骨組みや外装を取り付ける。車両の全長を伸ばす際には、中央部分を切断、延長することもあるのだ。かなり大がかりな改造になることが多いのである。

 一般に、霊柩車は葬儀場から火葬施設にご遺体を運ぶ車両である。儀式の一環なので、相応に豪華さを演出しているわけだ。これに対して、葬儀事業者の間では、死亡場所、警察、病院などから葬儀場、自宅といったところにご遺体を運ぶクルマを、搬送車、寝台車と呼んでわけているのである。しかし、法律上は基本的に霊柩車と扱いが同じとされる。

 近年、葬儀が簡素化して参列者が減少傾向にある。家族葬であれば、数人程度の場合も少なくない。また、ご遺族がいないために行政などが火葬を行う福祉葬も増えている。このような場合、必ずしもラグジュアリー感の強い霊柩車が必要になるわけではない。そこで、運転手を含めて3人が乗車可能なセレナ、ノアといったバン型のものや、ハイゼット(2名乗車)といった軽バンタイプなどの霊柩車が増えてきているという。

 北海道などでは大きな葬儀を行なっても霊柩車を仕立てず、マイクロバスに棺を収めて参列者とともに火葬場に向かうといった風習のあるところがある。この場合、シビリアンなどをベースにして後部に棺を納められるように改造した車両が用いられる。家族葬規模であれば、ハイエースコミューターなどをベースに、棺とともに8名が乗れるように改造されているものもある。

 本来、我が国において葬儀は「冠婚葬祭」のひとつであり、大きく盛大な儀式が行われてきた。核家族化、長寿化、ひとり暮らしといった家族形態の変化やコロナ禍によって人の集まる儀式が変化したことによって、葬儀の形態は大きく変わってきている。それに伴い、人生最後の移動を担う霊柩車の有り様にも変化の波が押し寄せているのであろう。


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