この記事をまとめると
■トラックの盗難対策について解説
■車両取り付け型の盗難防止装置には3つのタイプが存在する
■いま注目を浴びているのがGPS搭載タイプだ
24時間どこからでも位置情報を得ることができる
一般に空き巣の対策として、鍵をふたつかける、鍵をセキュリティ性の高いものにする、防犯カメラをつける、などといったことが有効だといわれている。これは、犯行に時間がかかることや人目があることによって、防犯効果が期待できるからだ。トラックの車両盗難防止対策も基本的にはこれと同じで、
・シャッターが閉まって鍵のかかる車庫
・人目がある場所に駐車場を設置
・監視カメラなどの防犯システムを設置
などすれば、盗難にあう確率は低下する。しかし、運送事業者のなかにはそこまで経費がかけられないところも少なくない。そこで、車両取り付け型の盗難防止装置の出番になってくるわけだ。
これには、大別すると3つのタイプがある。ひとつは車両に異常(揺らす、動かす、ドアをこじ開けるなど)があると、クラクションやライトで警告を発して、手もとの端末にも連絡がくるものだ。このタイプはとくに車上狙いに効果があり、いわば車両に番犬をつけておくようなものである。もうひとつはタイヤやハンドルを物理的にロックするタイプのものだ。車両を動かしにくくなるので、車両そのものの盗難防止に効果が期待できる。
3つ目が、いま注目を浴びているGPS搭載タイプだ。これは、決して新しい技術というわけではない。ナビゲーションシステムが開発されて以降、その精度が上がるにつれて車両盗難防止装置の専業メーカーが、30年あまり前から商品化をしていた。また、ホームセキュリティ業者がこの分野に参入したのもそのころである。
このタイプの特徴は、なんといってもGPSで盗難された車両を追跡できることだ。もちろん、それで必ず取り返せるというわけではないが、万一の際に警察が捜査するときにも大きな力になる。ただ、装着場所(わかりやすい場所だと犯人に取り外される)や装着方法・電源・位置情報の精度・コスト(機器の費用、取り付け費用、サービスのランニングコストなど)といった問題があり、運輸事業者にとっては必ずしも費用対効果があるとはいえなかったのだ。
ところが、IT・ICTが発達したことや2024年問題などがあり、運輸業界の労働環境改善、安全意識向上とあいまって、運行管理システムのなかに盗難防止システムを組み込むという発想が生まれたのである。運行管理システムは、自車がどこをどのように走っているかといったことを管理、記録するものであるから、当然GPSによる追跡が必須になる。運行管理上欠くことのできないタコグラフをデジタル化してクラウド管理をし、そのオプションとして盗難防止システムを組み入れれば、トータルコストを抑えることができるわけだ。
車両の追跡もGPSだけではなく、ジャイロセンサーやビーコンを組み合わせることで、山中、建物内、地下、トンネルなどといったGPS電波の届きにくい場所でも、正確な車両位置を示すことが可能になる。自車位置情報はクラウドサービスを利用すれば、24時間どこからでも登録した端末に示すことができるのだ。
トラックの盗難が増加する背景には、日本のトラックが海外で高い評価を受けていることも一因とされている。近年は、詐欺集団のように実行犯をインターネットで募り、指示役は裏に隠れてなかなか捕まらないといった、組織的な車輌窃盗団も暗躍しているようだ。車上狙いのような単独犯であれば、従来の盗難防止装置でも十分に対応可能だろう。しかし、運輸事業者のトラックを狙うような組織的な犯罪には、IT・ICTを駆使した盗難防止システムを導入する必要があるようだ。