経験するとわかるけど「ガチで恐怖」! クルマのブレーキが利かなくなったらどうする?

この記事をまとめると

■ブレーキが利かない理由はタイヤのグリップが失われているかシステムの問題に大別できる

■ブレーキが利かないクルマを減速させるにはエンジンブレーキを活用することが重要

■緊急時にはクルマをガードレールなどに擦り付けるか緊急避難所に進入して止めるしかない

ブレーキが利かなくなるときには予兆がある

 走行中にブレーキが利かなくなるトラブルは、想像するのも恐ろしいが、絶対ないとはいい切れない。もしもブレーキペダルを踏んでも減速してくれないシチュエーションになったらどうすればいいのか考えてみよう。

 まず、ブレーキペダルを踏んでも減速してくれないケースは大きくわけてふたつある。

 ひとつは雪や氷、オイルなどに乗って、タイヤのグリップ力が失われているケース。大雨のときのハイドロプレーニング現象などもこちらに当てはまる。そしてもうひとつは、ブレーキシステムに問題があるケース。

 今回はこの後者の話をメインに進めていく。

 ブレーキペダルを踏んでも、制動力が立ち上がらないときの原因は、フェード現象かベーパーロック現象の発生がほとんど。

 ブレーキはクルマの運動エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムなので、ブレーキシステムの熱容量をオーバーすると、ブレーキペダルを踏んでも止まらなくなってしまう。これがフェード現象だ。

 通常、メーカー純正のブレーキパッドだと、ブレーキローターの温度が300~350℃に達すると、ブレーキパッドの摩擦材に含まれている樹脂素材(レジン)が熱で分解気化し、パッドとディスクの間にガス膜ができ、そのガス膜の影響でブレーキの摩擦係数が極端に低下してしまう。下り坂が長く続くような山道でも、ブレーキペダルを踏みっぱなしにせず、エンジンブレーキを使ってできるだけブレーキペダルから足を離し、ローターを冷ます時間を作るようにしたい。

 もうひとつのベーパーロック現象も、ブレーキの熱が影響するトラブル。ブレーキを酷使することで、ブレーキキャリパーを動かすブレーキフルードが沸点に達し、フルード内に気泡が発生することで、ペダルを踏んでも油圧が伝わらなくなり、ブレーキが利かなくなる現象。フルードの劣化やブレーキパッドの残量が乏しくなると発生しやすくなるので要注意。

 あとはブレーキフルードの漏れや、ブレーキホースが裂けるといったトラブル、ブレーキペダルの裏側にフロアマットやペットボトル、缶などが挟まって、ブレーキペダルを踏めないといったケースも考えられる。

 いずれにせよ、これらの問題でブレーキペダルを踏んでも制動力が立ち上がらないときは、シフトダウンを繰り返し、エンジンブレーキを最大限活用すること。

 AT車ならパドルシフトなどを使って一番低いギヤまで落としてしまう(もちろんアクセルは全閉)。MT車ならオーバーレブをさせたり、シフトロックをさせないように、4速→3速→2速→1速と一段ずつギヤを落としていこう。

 次にパーキングブレーキをじわじわとかけてクルマを止める。

 このとき、慌てて一気にパーキングブレーキをかけると、リヤタイヤがロックして姿勢を乱したりスピンしたりすることになるので気を付けてほしい。

「それでは間に合わない」という緊急時には最後の手段。クルマの側面をガードレールやフェンスにこすりつけて減速させるか、山道などであれば道路わきの緊急避難所(砂などで凸凹を作った上り坂になっているスペース)に進入してクルマを止める。

 もっともフェード現象にせよ、ペーパーロック現象にせよ、ブレーキが急にまったく利かなくなることはなく、必ずその予兆があり、徐々に利きが悪くなっていくものなので、「あれ? なんだかブレーキの利きが甘くなってきたぞ」と思ったら、その時点で安全な場所にクルマを止めて、パッドやローターの様子、あるいはフルードの残量を確認。問題が見当たらなかったとしても、20~30分程度はクルマを止めたままにして、ブレーキの熱が冷めるのを待ち、それから再度走り出すようにしたい。

 また、一時的であっても何かブレーキにいつもと違う違和感があったら、すぐに整備工場にもち込んで、プロの点検を受けるようにしよう。ブレーキのトラブルは本当に怖いので、予兆を見逃さないことが肝心だ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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