WEB CARTOP | 独自の企画と情報でクルマを斬る自動車メディア

トランプ政権誕生はBEV大国の中国にとって茨の道! BYDのメキシコ工場建設の流れはどうなる? (1/2ページ)

トランプ政権誕生はBEV大国の中国にとって茨の道! BYDのメキシコ工場建設の流れはどうなる?

この記事をまとめると

■トランプ次期大統領はBEVの税額控除撤廃などのBEV優遇措置撤廃に向けて動いている

■隣国のメキシコではBYDが工場の建設を予定している

■トランプ政権になってからの中国車は茨の道が待ち受けていると予想される

BYDの次なるターゲットはアメリカ市場か

 2024年11月6日、次期アメリカ合衆国大統領にドナルド・J・トランプ氏が決まった。大統領選挙における同氏の公約のなかには、現在アメリカで行われているBEV(バッテリー電気自動車)購入における、最大7500ドルの税額控除(新車/中古車は4000ドル)を撤廃するとしており、すでに政権移行チームはそれに向けて動き出しているとのこと。さらに、トランプ次期大統領は、メキシコから完成車をアメリカ国内に輸入する際の関税率を200%にする可能性を示唆している。

 アメリカ・カナダ・メキシコはかつてNAFTA(北米自由貿易協定/いまは『USMCA:アメリカ・カナダ・メキシコ協定に置き換えられている』)を結び、活発な経済交流を行っている。そのなかでの「関税200%発言」に、メキシコ国内に完成車工場をもつ日系メーカーは当惑しているとの報道もあった。

 筆者は2024年9月下旬から10月上旬にかけ南カリフォルニア地域を訪れ、地元自動車業界関係者などと話す機会があったのだが、関係者ではなくとも、クルマに興味のある人も含めて「BYDってどうなの?」という質問であった。BYDとはいわずも知れた、中国のBYDオート(比亜迪汽車)のこと。

 じつはアメリカではすでにBYDがメキシコに工場建設用地を取得しているとの報道があり、広くこの報道が知れ渡っている。そして、メキシコに工場を建設するということは、そこからのアメリカ国内への完成車の出荷ということは容易に察することができる。現状、アメリカ国内への中国企業などからの投資は厳しく制限されている。そのため、アメリカ国内での自動車工場建設用地確保はまずできないものと筆者は考えている。

 そんな事情もあり、BYD製乗用BEV(バッテリー電気自動車)のアメリカ国内での販売は行われていない。そのため、「BYD製BEV=未知のクルマ」となっているのである。トランプ次期大統領の発言は、メキシコからの中国系ブランドのBEV輸入販売というものを警戒してのものと考えている。

 そこでメキシコ自体、つまりメキシコ国内のBEV事情を調べてみると、少なくともBYD、MG(上海汽車系)、GAC(広州汽車)、長安汽車、DFSK(東風小康汽車)、BAIC(北京汽車)、JAC(江准汽車)などが、メキシコ国内でBEVを販売していた。それどころか、BEVだけではなくICE(内燃機関)車をラインアップするブランドも多く見受けられた。

 JETRO(日本貿易振興機構)の資料によると、2023年にはメキシコ国内において中国車の現地生産を行っているのはJACだけとなっていた。2023歴年締め年間新車販売台数での統計上に存在する中国系ブランドだけを加算した中国車の販売シェア(ICE車も含む)は9.4%となっている。これに、統計外のBYDなどを加算すると、ざっくり全体の10%強は、すべてBEVとはいえないが、中国メーカー車となっているようだ。

 中国車以外も含めたBEV、PHEV(プラグインハイブリッド)、HEV(ハイブリッド車)の累計販売台数は7万3680台で販売シェアは5.4%を占めている。BEVだけをみると、2022暦年締め比で3倍弱にまで増えていることになる。

 メキシコも多くの新興国同様に大気汚染問題が深刻であり、その側面で電動車を普及させるためにさまざまな政策を行っている。そのひとつに、新車でのBEV輸入時の関税免除というものがあった。ただ、2024年9月30日までの期限付きで行われていたというのがくせもので、当初計画ではこれまでに中国メーカーがメキシコ国内に完成車工場(JACは商用車メインのブランドなのでBYDなどの本格的な乗用車ブランドの完成車工場)の建設を完了する予定だったのかもしれない。

 また、調べた限りでは、BYDが関税ゼロ措置の延長をメキシコ政府と交渉中との報道もあり、メキシコ国内におけるBYDの工場稼働開始までは、まだ時間がかかるように思える。ただ、アメリカへの輸出でアメリカが200%の輸入関税をかけるとなれば、工場建設及び稼働開始の様子見が続くことになるだろう。

画像ギャラリー

WRITERS

モバイルバージョンを終了