この記事をまとめると
■カーボンニュートラル政策の過程でバイオエタノールが注目されている
■トタルエナジーズのバイオ燃料「エクセリュウム・レーシング100」はフランスらしい成り立ち
■ワインの絞りカスや残渣が原料となっておりレースでも使用されている
フランスらしい考え方から生まれたバイオ燃料
バイオ燃料のうち、ガソリン機関の燃料としてカーボンニュートラルを目指すものがバイオエタノールだ。植物由来の燃料で、原料に含まれる糖質からエタノールを得る方法、または原料に含まれるデンプン質を糖質に変え、そこからエタノールを得る方法が採られている。
こうして作られるバイオエタノールのなかで注目したい存在が、トタルエナジーズ(仏)が開発したエクセリュウム・レーシング100だ。原料は、なんとワインの絞りカスや残渣。ゴミとして廃棄されるものを原料に、カーボンニュートラルの燃料を作り出すことに成功した。飢餓にあえぐ人たちの存在を無視せず、すでに飲食用としての役割を終えたものから燃料を作り出すわけだから、社会的にも問題はなく、むしろ植物資源の有効活用という意味で高く評価される燃料だ。
もっとも、冷静に考えれば、ぶどうを使って作られるワインそのものがアルコール(エチルアルコール)であるだけに、絞りカスや残渣でなく、ワインそのものが燃料として活用できる、といういい方もできる。
こうした意味では、ほかの果実酒の場合も同様だが、人間の飲食用に作られたワインを燃料として使用することは、本末転倒した使い方となるだけに、ワインと同じアルコール成分(=糖分)をもつ絞りカスや残渣に着目した点は、さすがワインの生産大国フランスの燃料メーカーらしい着眼点といえるだろう。
トタルエナジーズが開発したバイオマス燃料、ワインの絞りカスや残渣を原料とするエクセリュウム・レーシング100は、2022年のWEC第1戦「セブリング1000マイル」で初めて実用に供された。
その後、同社はル・マン24時間を主催するACO(フランス西部自動車クラブ)の公式燃料サプライヤーとなり、カーボンニュートラルの促進にひと役買う存在となっている。
ぶどうの絞りカス、残渣を原料とする燃料が、自動車すべての燃料源として活用できるほどの多大な生産量は望むべくもないが、カーボンニュートラル、あるいは二酸化炭素の排出量を減らさなければならない現代の燃料事情にあって、ある一定量の生産が確保できるだけに、新たなバイオ燃料としてその将来性は決して暗くない。
ひと口にバイオマス燃料というが、原料を何に求めるかで、そのアプローチ方法にはいくつかにわかれてくる。フランスはワインの生産大国だ。その生産過程で生じる廃棄物の量も相当なものだろう。この廃棄物に燃料としての再活用方法を見い出した着目点に、いかにもフランスらしさを感じ取ることができる。逆にいえば、カーボンニュートラルは現代社会で、それほど差し迫った大きな問題ということもできるだろう。