ニッポンの新たな風景「JPNタクシー」の存続が難しいとのウワサ! 後継車も出ないなら日本製タクシー専用車はゼロになる!! (2/2ページ)

JPNに代わるタクシー車両の開発も期待できない!?

 筆者の居住地域は東京隣接県であり、首都圏でも住みたい街の上位にランクインするターミナル駅があるが、そこのタクシープールで客待ちするタクシーは、いまでもクラウンコンフォートあるいはクラウンセダンばかりとなっている。

 さらに、生産終了の噂話が単なる噂では済まないのではと思わせるのが、LPガススタンドの廃業が止まらないことである。東京隣接県、つまり首都圏のある中核都市でターミナル駅を抱える某市では、その市内にLPガススタンドが1軒もなくなり大騒ぎとなっていると聞いている。それなりの規模を有する複数のタクシー事業者があるのに、遠方のLPガススタンドまで充填に行かなければならなくなったのである。

 すでに地方都市では同様の出来事が起きており、そのような地域では、トヨタ・プリウスなどハイブリッドユニットを搭載する中古車を購入してタクシーとして使っているケースが目立っている。

 日系メーカー内でタクシー専用ともいえる車両をラインアップするのはトヨタのみとなっている。それではトヨタはJPNタクシーに変わる車両を新たにラインアップするのかというと……、「トヨタではJPNタクシーに代わる車両の開発は行わないのではないかといわれています。となると、日本メーカー製のタクシー専用車両はなくなることになります」とは事情通。

 事情通はタクシー業界内ではすでに「ポストJPNタクシー」として、トヨタ・シエンタに注目しているようだと教えてくれた。先代シエンタのときにタクシーとして導入する事業者がおり、2列シート仕様が人気を博していた。しかし、その先代、そして現行モデルのシエンタをタクシーとして使用する最大の障壁が「耐久性」にあるようだ。「シエンタを普通に自家用車として使うことについての耐久性はなんの問題もないでしょう。ただ、都市部では5年ぐらいで45万kmほど走行距離が伸びるタクシーでは、専用設計されていないシエンタではそこが大きな壁として立ちはだかっているようです」(事情通)。

 日本国内でも路線バスについては全国的にBEV路線バスの導入が積極的に行われている。現状では中国・BYDオート(比亜迪汽車)を中心とした外資ブランドもしくは、海外委託生産モデルの普及が進んでいる。タクシーでも日本メーカー製で明確な選択肢がなくなると、バスのような動きが顕著となってくるかもしれない。

「BYDでは『e6』というBEVモデルがタイの首都バンコクやインドネシアの首都ジャカルタなどでタクシー車両として走っているのを見かけますし、事実それ以外の国でもタクシーとして走っています。日本でもすでにいくつかのタクシー事業者がe6を試験的に数台導入しています。JPNタクシー生産終了となれば、BYDサイドがタクシー事業者へ本格的なアプローチを仕掛けてくるのではないかとの話もあります。また、中国広州汽車もタクシーなどフリート販売向け専用のBEVセダンを、タイではタクシーベースとなるカローラアルティス(内燃機関)並みの価格で販売しており、破竹の勢いでバンコク市内でタクシーとして走り出しています。場合によっては広州汽車の日本市場参入というものを許してしまうかもしれません。韓国系ブランドも、韓国の首都ソウルではさまざまな韓国製BEVがタクシーとして走っているので、日本市場拡販の好機到来と捉えるかもしれません」(事情通)。

 ただし、トランプ新大統領誕生を目前に控え、日本政府が中国製品への警戒を強めているとの情報も入っている。経済安全保障問題のほか、トランプ政権の中国政策を意識し、ある意味できる範囲で同調しようとしているようなのである。それが顕著となれば、中国メーカーが日本国内でもいまより動きにくくなってしまうことになりそうである。

 世界的にBEV販売が苦戦傾向にあるとされているが、それはあくまで自家用レベルでの話。バスやタクシーなど公共輸送機関のBEV化は粛々といまもなお進んでいる。仮にJPNタクシーが生産終了となれば、しばらくは日系ブランド車のおもにハイブリッド車で各タクシー事業者は「ポストJPNタクシー」を探ることになるだろうが、中長期的に見れば日本のタクシー車両もBEVというか「脱化石燃料由来動力」は避けられないので、このままでは外資BEVタクシーの普及が懸念される。

 残る一手は水素燃料車開発で存在感を見せるトヨタが水素燃料タクシーをラインアップすることを願うばかりともいえる。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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