この記事をまとめると
■1993年にデビューしたアウディRS2アヴァントはれっきとしたポルシェ製品だ
■ポルシェはアウディ製直5エンジンをチューニングして315馬力を絞り出した
■フォルクスワーゲングループの社長であったピエヒは特別にRS2セダンをワンオフオーダーしたらしい
RS2アヴァント開発は財政難のポルシェを救うための施策だった
ポルシェほど他社からの委託でクルマを作っているメーカーはありません。古くはフォルクスワーゲン・ビートルやヴァンダラーのセダン、有名どころとなるとメルセデス・ベンツ500Eの名を挙げねばなりませんし、珍しいところではサファリラリーで優勝したフェアレディZもまたバイザッハの息がかかっているのです。
そもそも技術開発の請負がメイン事業だったポルシェですから、当たり前といえば当たり前。ですが、ご存じのとおり500Eは財政難に陥った同社を救済するための事業であり、また同時期にオーダーされたアウディRS2も救済事業だったという、ちょっと情けないストーリーもあるのです。
アウディRS2アヴァントは、別名ポルシェ Type 2862と呼ばれるとおり、れっきとしたポルシェ製品。1993年のフランクフルトモーターショーでお披露目された際は、事情通ならずとも「そこまでポルシェのパーツ使わなくとも」と苦笑いを浮かべたかもしれません。
なんといっても、80アヴァントをベースにしながらホイールはカレラカップと同デザイン、ブレーキキャリパーは928S4GTで使っていた赤ブレンボ、そしてよくよく見ればサイドミラーだって964タイプの流線形! 「アウディよ、そんなにポルシェが好きなのか」となるのもごもっとも(笑)。
とはいえ、歴史をほじくり返せばアウディはフォルクスワーゲンと同じくらいポルシェと仲がいいというか、親密です。先のNSUから始まって、914がワーゲンとの協業だったように、FRポルシェの先駆けたる924は、本来アウディ向けに開発したモデルでしたからね。また、RS2開発当時、フォルクスワーゲン&アウディの総帥はポルシェ一族に連なるフェルディナンド・ピエヒですから、もう兄弟会社と呼んでも差し支えないほどの関係だったといえるでしょう。
で、上述のとおりRS2がオーダーされた当時のポルシェはシリアスな財政難に襲われており、このままでは立ち行かなくなるくらいの危機を迎えていました(ドイツ国内の労働者に関する法律が変わり、人件費が高騰したのが理由という説もあります)で、タイミングよくメルセデス・ベンツから500Eの足まわり開発案件が舞い込み、広がるトレッドに合わせてフェンダーごとあと付けする仕事をゲット。