最新技術を表す専門用語も増えてきた
フリーストップ
ピットイン(インラップ、アウトラップ、ピット作業)によって順位変動(=順位を下げる)が生じないピットストップのことを指す。この場合のフリーは、フリーチャージ(無料)などと同じ意味で、ピットストップによる代償(順位の低下)を払わないで済むことから使われている。
グレイニング
タイヤのトレッド面がささくれ立つ摩耗状態を指す言葉だ。トレッド面に小さな毛玉状のゴム粒子(グレイン)が生じ、これがトレッドの平面性を失わせ、接地面の減少からグリップ力の低下を生じさせることになる。この現象は、運転方法ではなくトレッドコンパウンドと路面温度との不整合によって起こる場合が多い。
スキッドブロック
車体のアンダーパネル(床面)に装着された棒状、板状のパーツで、車体下部のフラットボトム形状によるダウンフォース発生の低減を意図する車両規定だ。なお、レース中にスキッドブロックと路面が接触、スキッドブロックが摩耗して所定の厚みが保たれていない場合、規定違反としてペナルティの対象になる。このため、路面との干渉を避けるために車高を下げることができなくなり、結果的にダウンフォースの抑止効果も併せもつ。
ディプロイメント
回生エネルギーのことを指し、2014年以降のF1で使われるようになった言葉だ。回生エネルギー(ディプロイメント)には2種類あり、MGU-KとMGU-Hに分けられている。MGUはモーター・ジェネレーター・ユニットの略で、Kはキネティック(運動エネルギー=ブレーキ回生)、Hはヒート(排熱エネルギー=排気タービン発電)のことを指している。
DRS
DRSとはドラッグ・リダクション・システムのことで、走行するマシンのリヤウイング角度を意識的に変更して空気抵抗を減らすシステムのことを指す。通常はダウンフォースを増す目的で装備されるリヤウイングだが、直線走行時にはこの角度が抵抗となって最高速の伸びを妨げることになる。この対策として直進時にウイング角を変えて最高速が伸びるようにしたシステムだが、作動可能な状況はFIAによって厳しく制限されている。
かつては、排気量や車体サイズ、重量など、競技や車両を規定する要素は少なく、特別な用語もなかったのだが、レースカーを構成するいろいろな力学の進歩や環境性能が重要視されるようになった現代、当時では考えもつかなかった規定やメカニズムが登場。ここで触れた10項目も、こうしたモーターレーシング史進化の1ページといえるだろう。