パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった (2/2ページ)

こんな見た目でも全然問題なし!

 そもそもこの「AirFree」、「なんでタイヤなのに青いんだ?」と疑問に思う人もいるだろう。これにはふたつ理由がある。

 ひとつは、ブリヂストンがさまざまな色で視認性のテストした結果、この青が1番視認性が高く、安全性が高いというデータが取れたから。白とかのほうがよさそうだが、「世の中の道路標識も青いでしょ?」と説明に付け加えられ納得。もうひとつは水の星である地球の「青」をイメージしているそう。ドレスアップ目的で綺麗な色にしたわけじゃない。

 ちなみにこの青い部分はプラスチック(洗濯バサミ比)より柔らかく、ゴムよりは硬い特徴を持っている「熱可塑性樹脂」。サスティナブルであることが重要なので、熱で溶かすことで、いうまでもなくリサイクルできる。

 肝心のトレッド面は、トラックのタイヤなどでお馴染みのリトレッド可能な素材を採用。つまり、タイヤ丸ごとリサイクル可能というわけ。なお、ホイールは一体構造なので、ホイール交換という概念はない。ドレスアップを考えている層は回れ右ということで……。

 気になるタイヤサイズは、「145/80R12」という軽自動車における一般的なサイズ相当。PCDは4穴100。かなり細く見えるが、見た目のせいか? 聞いたところこれ以上のサイズも技術的には作れるそうだ。

 試乗は、技術センター内のテストコースを2周走れるとのこと。距離にして合計1kmほど。

 ただ、乗る前からこれは不安すぎる。写真のとおり、どう見てもトレッド面がペッタンこ。履帯の如く地面に張り付いているではないか。タイヤの接地面積は一般的に「ハガキ1枚分」といわれるが、これは往復ハガキくらいありそうだ(見た目だけかもしれないが)。一般的なタイヤでこんな見た目ならいますぐエアを入れてこい状態。ちなみにこのタイヤにはサイドウォールは不要なようで、その分でも素材を節約できるとのこと。小石などは挟まっても勝手に取れるので心配ないとの説明を受けた。

 クルマに座ったときも、サスペンションのストロークとは異なる変な感触が襲う。「うわぁ……」と思わずこぼれそうであった。

 と、そんな不安な感覚をもちレッツゴー……! と走り出したらこれがまぁビックリ。ピョンピョン跳ねるような挙動も、フラフラするような感じもなく、至ってフツーに走っているではないか。見た目のインパクトとは裏腹に、あまりにも拍子抜けなので粗探しをしたいのだが……ほぼ見つからない。

 強いていうとすれば、乗ってすぐ感じたのは、見てのとおりこのタイヤは無数の青いリブでトレッド面を支えているので、転がるたびにハンドルにコツコツ振動がステアリングや体に響く点。しかし、出している速度は40〜50km/h前後。先述のグリスロの想定する速度の2倍だ。しかもこっちの車両はミライース……かと思いきや、試乗はなんとも珍しいスバル・プレオプラス(ミライースのOEMモデル)に、いつの間にか変わっていた!

 ロードノイズもそれなりにあるが、乗ってるクルマによる問題もあるだろう。ノイズを消すような構造がタイヤにもほぼないので、仕方ない。音が籠らないオープンボディのグリスロなら問題ないだろう。要は、頑張って粗探しをした結果、ほぼなにもないという結論だ。

 と、いうよりもこんな見た目でよくタイヤとして機能するなと、技術力の高さに感動すら覚えた。ちょっとしたスラローム区間もあったが、700kg前後のクルマをしっかり支えている点はさすがだ。

 ウエット性能などは不明だが、天下のブリヂストンが手がけるのだから、そこは心配無用なはず。ただ、リヤシートに乗ったらまた違った感触が得られたかもしれない。それについては次の機会を待とう。

 試乗を終えたあとに、「エアレスタイヤって名前ではないが、ノーパンクタイヤって昔からあるじゃないですか。それじゃダメなの?」と質問をしてみた。

 関係者は、「ノーパンクタイヤは空気の代わりにゴムなどを詰め込んで、物理的にパンクしないように作ってるんですね。なので重いんですよ。それに、トレッドの貼り替えも現状の製品では想定してないので、リサイクルや製造工程を考えた際、それだとサスティナブルじゃないので……」との返答。

 今後のこの「AirFree」は、グリスロへの採用へ向けて最終調整をし、特定の業者に供給しつつ、引き続き実験と開発を進めていくそう。価格は同サイズのタイヤと比較すれば高価になるが、いままでのタイヤ以上に長く使えるのと、メンテナンスフリーな点を考えたら、総合的にコスパに優れるというのがメーカー側の見立てだ。

 タイヤ界の革命児「AirFree」、天晴れである。


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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