ルノーと英国フォードもミニバンをラインアップ
ルノー・エスパス
ヨーロッパのミニバン史において、エスパスほど深い爪痕を残したモデルもないでしょう。デビューは1984年ですから、マツダMPVよりも4年、フォルクスワーゲンのT4トランスポーターより6年も早いというエポックメーカーですから、欧州ミニバンの代名詞と呼んでも差し支えないくらい、人々の記憶に定着しているかと。
先駆けらしく、エスパスは縦置きエンジンを短いノーズの下に格納したFFという独特なパッケージが特徴です。シャシーそのものは同社のミディアムセダン18を流用しつつ、エスパス(スペース)の名前どおり快適な居住空間を実現。8ライトの広大なガラススペースも手伝って、当時のフランスメディアは大絶賛したそうです。
1991年にフェイスリフトを受けていますが、ハードにはほとんど変更がなく、顔つきがいくらか変わった程度。ですが、ご記憶の方もいるでしょうが、ルノー・スポールに転がっていたF1エンジンをミッドシップして、エスパスF1となったのがこのモデル! 7人乗りだったのが4座のバケットシートに変更され、カーボンを多用したワイドボディはエスパスのイメージを乱暴なまでにアップデートしてくれたのでした。
なお、1997年、2003年、2015年とモデルチェンジを繰り返し、現在は2023年に登場した6代目エスパスとなっています。が、スタイルはミニバンというよりSUVにほど近く、これまた時代の要請なのかもしれません。
フォード・ギャラクシー
ギャラクシーといえば、アメ車ファンならフルサイズセダンを思い出すかもしれませんが、こちらは英国フォードが発売した3列シートのミニバンです。同じグループ内ながら脈絡のないネーミングには首を傾げちゃいますよね。
それでも、ギャラクシーは2リッターのガソリンエンジンから始まって、1.9リッターのターボディーゼルまで揃えて、それなりに商品性の高いものでした。グローバル企業だけあって、生産はポルトガルの大規模ラインを使い、ヨーロッパ各国へと輸出されています。
2006年にはフルモデルチェンジを受けるのですが、今度はギャラクシーとS-MAXというダブルネームで登場し、走りとスペース効率にこだわった設計を誇り、2007年度のカー・オブ・ザ・イヤーまで受賞するというデキのよさ。で、不思議なことにポルトガルのラインは使われず、ベルギーとロシアの工場で作られるというワールドワイドっぷり。当然、ロシアをはじめとした東欧圏でも走っていたモデルです。
次いで2015年には3代目にモデルチェンジを敢行。キープコンセプトに見えますが、同社のCD4という汎用性の高いプラットフォームが用いられ、効率はもちろん剛性&軽量化を発展させており、ミニバンに求められる経済性も追求したモデルとなっています。
ディーゼルのエコブースト技術や6速DCTといった技術も投入されるなど、初代のどんがらみたいなクルマに比べたら格段の進歩を遂げつつも、2023年には生産中止。以来、ギャラクシーの名は復活していません。ちなみに、3代目はスペインでの生産とされており、フォードのロジスティックのミステリアスさにも磨きがかかっておりました(笑)。