ルノーがハイブリッド車に使ったF1直系の技術……って聞くとなんかたぎる! 「ドッグクラッチ」ってそもそも何?

この記事をまとめると

■ルノーのハイブリッドシステムであるE-TECHには「ドッグクラッチ」が採用されている

■滑りのない動力伝達が可能でコンマ1秒を争うレースの世界で採用されていた

■ドッグクラッチの利点である滑りのない動力伝達は燃費向上にも貢献する

ドッグクラッチってなんだ?

 フランスのルノーが開発したハイブリッドシステムであるE-TECHには、エンジンとモーターの動力を断続する部分に、ドッグクラッチが採用されている。

 ドッグクラッチとは、まさに犬の歯のような形をしたクラッチという名称で、向かい合うふたつの歯車には、歯と歯の間に相手側の歯がかみ合わされる隙間があり、両者が互いの隙間にうまくはまることによって、滑りのない動力伝達を行うことができる。

 採用例で有名なのは、レーシングカーだ。寸分のない動力伝達により、コンマ1秒を争うためである。

 機構の説明にもあるように、ドッグクラッチは、歯車がかみ合わされる方式なので、摩擦板を利用する一般的なクラッチと比べ、滑りが生じない。なので、動力を無駄なく伝達できる。一方で、噛み合う双方の歯車の回転が正確に合わないと、歯と歯を噛み合わせる時期がずれ、動力を伝達できなくなったり、伝達が遅れたりする懸念もある。

 レーシングカーはもとより、モータースポーツの場面で、ヒール・アンド・トゥというエンジン回転数を合わせながらダウンシフトする操作が誕生した背景には、エンジン回転数を合わせないとドッグクラッチを使うクルマではダウンシフトできないためでもあった。

 一般の市販乗用車でも、ヒール・アンド・トゥの操作をしたほうがより滑らかにダウンシフトができる。しかしやらなくても、シンクロメッシュと呼ぶ回転を合わせる機構が付いているので、ダウンシフトはできる。ただし、直後に強いエンジンブレーキが掛かるかもしれない。

 ルノーのハイブリッドシステムがドッグクラッチを採用しながら滑らかに走れるのは、モーターはエンジンの100分の1の速さで回転調節ができるからだ。なおかつ、電子制御によって微小な回転の調節も、電気で動くモーターなら不可能ではない。ドッグクラッチを使っても、回転をモーターでうまく合わせ、エンジンを併用した走りにつなげられる。

 そのうえで、ドッグクラッチの利点である滑りのない動力伝達により、手応えのよい加速で壮快な運転を味わえ、しかも燃費のよさを両立する。

 F1の経験をもつルノーは、レース部門と量産車部門の技術者の交流があるという。そういう組織形態も、レース技術を量産のハイブリッド車に活かす発想につながった。運転の喜びを企業の特徴としながら、環境にも配慮した技術開発の一例といえる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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