CO2を使って合成燃料を作るプラントが爆誕! だから気にせずガソリン車にいつまでも乗れる……とはならなそう (2/2ページ)

合成燃料が求められる分野とは

 また、カーボンニュートラル燃料を乗用車で使うようになるには、クルマより優先順位の高い分野で、カーボンニュートラル燃料が普及することが必要だ。とくにカーボンニュートラル燃料が強く求められているのは航空機だ。

 ご存じのように、航空機にとって重量増はご法度で、多量のバッテリーを積んだ電動飛行機というのは、こと旅客機や貨物機においては現実的ではない。カーボンニュートラルのジェット燃料を合成、それを利用できるようにすることが喫緊の課題となっている。

 そのほか、軍事車両なども運用や補給を考えると電動化との相性がいいとはいえない。こちらもカーボンニュートラル燃料を利用するのが現実的だ。むしろ、カーボンニュートラル燃料を自前で用意できることは戦略的に優位になるともいえる。

 というわけで、カーボンニュートラルの合成燃料が量産できるようになったとしても、まずは航空機から活用されるであろうというのが既定路線となっている。

 もちろん、いつかは大衆が使う乗用車を動かすための合成燃料が流通する可能性もあるが、そのコストが大幅に下がるというのは考えづらい。冒頭、ENEOSの実証プラントについてグリーン電力を使うと記したが、電気を消費して合成燃料プラントを動かし、さらに燃料を全国のガソリンスタンドにデリバリーすることを考えたら、地産地消的になっていくグリーン電力で直接EV(電気自動車)を充電するほうがエネルギーロスも少なく、当然ながらコスト安となる。

 たしかに、カーボンニュートラル燃料の製造が行われるようになれば、その一部は一般向けに乗用車が使うガソリンの代替品として供給されるかもしれない。しかし、それは製造コストやロジスティクスなどを考えると、EVを直接充電するより高価になってしまうだろう。

 未来のモータリゼーションを想像すると、庶民はグリーン電力を直接EVに充電してローコストに運用、カーボンニュートラル燃料は富裕層や熱烈な趣味人が、コスト高を承知で使う……そんなストーリーが描けそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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