中国ではプレミアムブランドとして大成功
2000年代前半あたりからビュイックブランドはアメリカ市場よりも、中国市場のほうでより高い人気を博すようになった。2000年には、ほぼ中国専売といっていい形でフルサイズミニバンとなる「ビュイックGL8」の初代がデビュー。以降、現行モデルで4代目となるが、ラグジュアリーミニバンの先駆車としていまもなお中国におけるビュイックの看板車種となっている。
ビュイックブランド車はアメリカでは4車種のみのラインアップとなっているが、中国ではモデルラインアップが細かく同条件でカウントできないが、12車種ほどラインアップされ、アメリカ市場では存在しないPHEV(プラグインハイブリッド車)やBEV(バッテリー電気自動車)も豊富に取り揃えている。
このような状況なので、いつしかアメリカでも「ビュイック=中国向けブランド」のような印象をもつようになった。南カリフォルニアではせいぜいアンクレイブをパラパラ見かける程度だったが、2024年秋に南カリフォルニアを訪れると、ビュイック車を2023年と比べても結構な頻度で見かけることができた。
街なかでよく見かけるのは、トヨタRAV4クラスのサイズとなるクーペSUVスタイルを採用する「エンビスタ」と、コンパクトクロスオーバーSUVとなる「アンコール」の2台。ビュイックは2024年モデル(2023年秋より発売)にて、アンコールとエンビスタの上級車となる「エンビジョン」をビッグマイナーチェンジし、エンビスタと共通イメージの顔つきに変更しているので、それもあってビュイック車が目立つように見えたのかもしれないが、この顔つきになってから、アメリカ人消費者のなかでも好んで乗る人が出てきているように見えた。
ただし、GMのなかのビュイックというアメリカンブランド車となるが、生産はアメリカやカナダ、メキシコでもない。アンコールとエンビスタは「GMコリア製」、つまり韓国製となっている。エンビジョンについては実車で原産国表示を探したのだが見つけることができず、調べてみると「上海通用(上海GM)製」つまり中国製となっているようである。エンビスタの兄弟車ともいえる「シボレー・トラックス」、アンコールの兄弟車「シボレー・トレイルブレイザー」もアメリカではGMコリア製が販売されている。
筆者は2024年秋に南カリフォルニアを訪れてレンタカーを借りるときに、「あっ シボレーのクルマがある」としてセレクトしようとしたのだが、それがシボレー・トラックスだと気がついてすぐやめた(アメリカ生産のアメリカ車に乗りたかった)。
GMでは、アメリカ国内工場で生産した車種については、運転席ドアのラッチ部分にそれぞれの工場で異なったデザインのシールが貼ってあるので、同じGM車でもアメリカ国内製か否かをすぐに判別することができる。それだけGM車を買う人は自国生産か否かにこだわるのかもしれない。
そう考えると、いまどきビュイック車に乗るユーザーというのは、アメリカンモデルに乗っているというよりは、海外ブランドモデルに乗る感覚でいるのかもしれない。