無人のフォーミュラマシンが「自分で考えて」鈴鹿でバトル! ぶっちゃけ人間より「遅め」だけど技術には脱帽!! (2/2ページ)

ついに鈴鹿を自律走行マシンが駆け抜けた

 11月9日(土)、午前のA2RLマシン走行直前には、本家スーパーフォーミュラの予選走行が行われていた。1周の最速タイムを争う予選だけに、コーナリングは相変わらず切れ味が鋭く刺激的だ。

2024年11月9日 スーパーフォーミュラ第8戦鈴鹿の予選Q1を走る36号車バンテリン・チーム・トムスの坪井翔選手

 それを見た直後だっただけに、A2RLには分が悪かった。遅い、遅いのだ。スーパーフォーミュラと同排気量のエンジンを使うものの、仕様が異なりエキゾーストノートは太く重たい。それゆえにどこか牧歌的な雰囲気が漂い、それが余計に遅く感じられる要因にもなっていると感じる。しかし、今回の走行は「AI対AI」のマッチレースと銘打たれているものの、デモンストレーションの意味合いが強く、安全マージンを十分とったものであることは想像に難くない。

 それに忘れてはいけない。これは無人で走行することを目的に、この世に生まれたばかりの子どもだ。マシンのパワーが異なることはもちろんだが、運転操作にしたって一流アスリートのスーパーフォーミュラドライバーに対し、生まれて間もない子どもが勝てるわけがないのだ。

スーパーフォーミュラ第8戦の予選終了後に「AI対AI」のデモレースに参加したA2RLマシン「Yalla」

 それにしてもじつに奇妙な光景だった。レーシングマシンは人が操るものと勝手に頭が認識しているせいか、無人のマシンがコースをある程度の速度で加速し、ブーレキングし、コーナリングしているのがにわかに信じられなかった。本当は箱のなかに人間のドライバーが隠れて運転しているんじゃないかと思うほどだ。しかもじっくり観察していると、AIの仕業か周回ごとに学習が進んでスピードが上がっている気がするし、走行ラインもいくつかトライしている様子も伺えた。

 この日はホームストレートエンドで時速220kmに達していたという。ここ鈴鹿では1カ月以上も前からテストを行い、約70時間の走行経験を積ませたそうで、その際には時速250km/hにも達したというのだから、そのポテンシャルは侮れない。

鈴鹿サーキットのホームストレートを疾走するA2RLの自律走行マシンEAV24の「nova」

 SNS上ではA2RLを「巨大なミニ四駆」だなどと揶揄する書き込みを見つけたが、あちらはガイドレールに沿って走っているホビーだ。一方でA2RLのEAV24は、何もないアスファルトの上を各種装置を制御しながら遠隔操作に頼らず自律して走っている。しかも少しの間隔を開けて2台も。壁に沿って走っていたとしたらそれはクラッシュだ。つまりミニ四駆を想起させるかもしれないが、ずっと高度でまったく別物だ。なんならAIの判断でオーバーテイクを決めることすらある。

 しかし、走行風景を見ていると、A2RLは自律走行できるレーシングマシンで何を目指しているのだろうか、そしてなぜ日本のレーシングマシンを使うのか、疑問が沸々と湧いてきてしまった。

 そこでデモ走行が終わった後、A2RLに問い合わせしたところ、なんとA2RLを主催するASPIRE(アブダビ先端技術研究評議会のイノベーション促進部門)のCEOステファン・ティンパノ氏が、自らWEB CARTOPの単独インタビューに応じてくれることになった。果たしてA2RLとは何なのか、なぜスーパーフォーミュラをプラットフォームに自律走行マシンを作り上げたのか、根掘り葉掘りお話をうかがったので、後日掲載予定の記事をお楽しみに。


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